日本は高齢化率25%を超える世界有数の長寿国家であり、これまで高齢者に関する調査研究は数多く行われてきた。その中でも高齢者が健康障害に陥りやすい状態をさす概念としてフレイルティ(虚弱)が注目されている。 本研究では、推定式による基礎代謝量測定ではなく電気インピーダンス法と呼吸測定によって測定された個人の正確な基礎代謝量と全身の筋肉量や口腔機能との関係性を解析することで、フレイルティやサルコペニアと口腔機能との関連を明らかにすることを目的に行われた。 2015年~2016年の調査に参加したA県O町在住のアルツハイマー型認知症高齢者110名のうち、2015年に改定水飲みテストの判定が5であった63名(平均年齢 86.1±5.3歳、男性6名、女性57名)を対象とした。対象施設は介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホーム、通所介護事業所とした。調査項目は、性別、年齢、Barthel Index、Vitality Index、MWST、口腔ケア介助拒否、舌苔の付着状況、口唇閉鎖および舌運動などとした。2016年のMWSTの判定が5の者を嚥下機能維持群(47名)、5以外の者を嚥下機能低下群(16名)の2群に分類し、予知因子の検討を行った。なお、基礎代謝計(MEDGEM)を用いた測定も同時に実施したが、健康除外群にのみ測定可能であったため、実施不可能であった。 嚥下機能低下群の方が有意にVIが低く(p=0.014)、口腔ケア介助拒否の者(p=0.001)や舌苔が付着(p=0.036)している者が多く、口唇閉鎖(p=0.031)および舌運動(p=0.042)が良好な者が少なかった。以上の結果から口唇閉鎖や舌運動の不良がみられた場合、嚥下機能の精査および訓練を開始する必要性が示唆された。
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