研究課題
口腔の病的状態と全身の病的状態についての相関性が高いことが認知されてきた昨今、その因果関係を示すエビデンスの提示が試みられている。一方、口腔の健康増進が全身の健康増進に寄与するという因果関係を示すエビデンスは少ない。その大きな理由は、歯科において全身の健康増進を評価するための確立された指標がないからである。したがって、上記の因果関係を示すエビデンス提示には、まず口腔の健康増進により変化する全身の健康指標の確立が必要である。以上を背景に、前年度に引き続き口腔の健康増進が全身の健康増進に貢献するという因果関係を目指す介入研究を行った。ここでの口腔の健康増進とは、口腔疾患の臨床症状がない健常被験者の歯面に存在する病原性バイオフィルムを除去し、口腔細菌叢の健全化を図ることである。全身の健康増進については、主要評価項目として、血圧に加えて血管内皮細胞の機能評価「血流依存性血管拡張反応検査(Flow Mediated Dilation ; FMD)」を採用し、各値が改善することを目指した。尚、副次的評価項目として、歯周ポケット内のプラ-ク中の細菌の質的・量的分布および血中炎症性マ-カ-を採用した。介入項目は、オーダーメードトレー内に洗口殺菌剤を適用し、歯面上の口腔細菌を一時的に無菌化するDental Drugu Delivery System(3DS)を採用した。試験終了後に得られた各データの集積を行い、口腔の健康状態と各評価項目との因果関係について解析している段階である。
3: やや遅れている
臨床試験スケジュールの完遂が当初の予定時期より遅れ、すべてのサンプル解析に至らなかった。
臨床試験によって得られた介入前後の各サンプルについて解析を順次進めていく。得られたデータについては、個人識別管理を行い、対応表を有する匿名化を行うことにより、研究者等に被験者の特定ができないようにして管理する。匿名化したデ-タのみを使用し、統計解析を行う。これらの結果から口腔の健康状態と血管内皮機能との因果関係を分析する。分析後は、国内学会での発表および国際学術雑誌へ投稿することを計画している。
臨床試験が当初予定していた計画より遅れたため、サンプル解析の一部が次年度に持ち越す結果となった。最終年度は、残りのサンプル解析を行う。また解析した結果をまとめ、国内学会での発表および国際学術雑誌への投稿を行う予定である。
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