研究実績の概要 |
本研究では, 原因疾患を踏まえた実態調査に加え,認知症の摂食嚥下障害の多様性や認知症の原因疾患の特徴を踏まえた介入案の提示を行ったうえで,効果検証を行った. (1)食の多様性支援マニュアル:アルツハイマー病(AD)以外のレビー小体型認知症(DLB)や前頭側頭型認知症(FTD)などについて、認知症の摂食嚥下障害の多様性に配慮した支援案を作成した.マニュアルは、支援の方法のみならず複数の専門職がそれぞれの専門分野を生かした連携をして活用できるような配慮をした。 (2)AD以外の認知症原因疾患と診断された認知症高齢者の実態調査:認知症高齢者のAD以外の神経心理学的特徴を有する者の抽出を主眼とした実態調査を行った.本調査結果では, DLB167名、FTD37名、脳血管障害とADの合併例(AD with CVD)196名、正常圧水頭症とADの合併例(AD with NPH)11名の調査を行った。食行動ではFTDとAD with NPHの異食・盗食が有意に多く、目の前に食べ物があるとき、好きな食べ物や気分の高揚した時は多めに食べてしまう、固形スープや冷凍食材など調理前のものを食べるなどの例が多く上がった。一方DLBではお手拭きをちくわと間違える、机の上をつまむ行動があった。食べるペースの速さ、詰め込み、DLBでの食具使用困難は振戦によってこぼす、食品の物性の判断と適切な食具の判断・適用が難しい(箸置きで食べる、ヨーグルトを箸で食べる)、パックの開封困難など疾患特性の影響がある特徴的なケースがあった。DLBのむせは65-74,75-84,85-94歳の各年齢層でも30~45%の割合でみられ、65歳未満では60%と有意にAD,FTDより頻度が高かったが、ADwithCVDはDLBと同程度であった。ADwithNPHはDLB同様に上肢のスムーズな協調動作が困難で、握力低下している特徴があった。
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