研究課題
本研究の目的は、軽度認知障害(MCI)者において食事や口腔状態が与える影響について検証することである。そこで国立長寿医療研究センターもの忘れ外来に来院された方のうち、特にMCIと診断された方を対象に、食行動や口腔状態が食欲の維持・向上を介して全身状態(認知機能や栄養状態、体組成など)に与える影響を他の認知症患者と比較しながら検討した。さらに食事指導と口腔管理の介入調査をすることにより、これらの指導・管理がMCIの者の認知機能や栄養状態、運動機能などの低下を抑制する可能性について検証したいと考えた。研究計画1年目である平成28年度はMCIの者とアルツハイマー型認知症患者の食欲の低下に関連する因子について横断的に比較検討を行ったが、平成29年度はさらにMCIの者のうちアルツハイマー型認知症に移行しやすいと報告されているamnestic MCIの者を同定し(297名)、同様の検討を行った。その結果、amnestic MCIの者においてもMCI全員を対象とした結果同様、食事中の注意が維持できないこととうつ状態が食欲と関連する傾向が見られた。また、アルツハイマー型認知症以外の認知症の一つであるレビー小体型認知症患者(170名)の食行動特性に関しても解析を行い、アルツハイマー型認知症患者と比べて嚥下障害や咀嚼障害、便秘がより悪化しており、食欲の低下、食具使用の失行、一口量が適当ではないなどの問題があることが分かった。一方、先行研究や前述の解析ではMCIの者において口腔状態と全身状態の関連が認められなかったことや患者負担などの倫理的配慮により、本研究期間中に対象者に介入を行うことは出来なかった。そのため、平成29年9月までにもの忘れ外来を受診した延べ5,209名のうち2回以上来院された方753名を対象に縦断的な解析を行っており、今後介入研究実施に資する根拠を得たいと考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Geriatrics & Gerontology International
巻: 印刷中 ページ: 印刷中