研究課題
糖尿病モデル動物へのエストロゲン投与による血管新生への作用及び創傷治癒への効果の検証の目的のもと、下記の研究計画を実施した。なお、実験はプレテスト等の結果より交付申請時の方法に修正を加えた上で実施した。野生型(WT)-偽手術(SHAM)、WT-卵巣切除(OVX)、WT-OVX+エストロゲン投与(E)、2型糖尿病モデル(db/db)、db/db+Eの5群を設定し、背部に直径4 mmの円形皮膚全層欠損創を左右2個作製し、15日間治癒過程を比較、創面積比(各日の創面積/創作製時の創面積)の推移を数値化した。また、空腹前の血糖値(BS)、空腹後2、4、6、12時間後のBSと創作製後0日目から14日目までの各日随時BSを測定した。BSは全ての測定時期においてdb/dbの2群がWTの3群よりも有意に高値であった。一方、db/db+E群はdb/db群よりもBSが有意に低下した。db/db群は創作製後5日目まで創面積比が拡大し続けた(2.96 ± 0.18)。その後創面積比が縮小するものの、創作製後14日目においても創作製時よりも創面積比は大きかった(1.74 ± 0.38)。db/db群は全期間を通してWTの3群よりも有意に創面積比が大きかった (p < 0.05)。一方、db/db+E群は創作製後拡大することなく徐々に創面積比が縮小し、創作製後14日目までに瘢痕治癒した(0.13 ± 0.02)。db/db+E群は全期間を通してdb/db群、WT-SHAM及びWT-OVX群よりも有意に創面積比が小さかった (p < 0.05)。以上の結果より、2型糖尿病モデルマウスへのエストロゲン投与は血糖値を低下させること、皮膚創傷治癒を促進することが明らかとなった。次年度以降は機序解明を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
プレテスト等の結果から実験計画に修正を加えたものの、H28年度に計画した研究内容は概ね実施できたため、上記区分と判断した。
平成29年度は以下に示す2つの計画を実施する予定である。①糖尿病創部での血管新生に関与する因子のスクリーニング平成28年度に採取した創部のサンプルからcDNAまたは蛋白質を抽出し、血管新生に関与する増殖因子及び阻害因子に関してスクリーニングを行う。また、創作製後14日目の組織切片を薄切し、抗CD31抗体免疫染色で新生血管の形態学的観察を行う。②糖尿病での血管新生へのエストロゲンの作用機序解明へ向けたサンプル採取H28年度と同様に野生型(WT)-偽手術(SHAM)、WT-卵巣切除(OVX)、WT-OVX+エストロゲン投与(E)、2型糖尿病モデル(db/db)、db/db+Eの5群を設定し、直径4 mmの円形皮膚全層欠損創を左右2個作製し、創作製後7、9、11日目に各群創部の組織及び血液を採取する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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