本研究の目的は中堅看護師の「停滞」に着目し、中堅看護師の「停滞」から離職意思を抱くまでの過程の構造化を図ることである。これまで、全国の病床数200~500床の施設に従事する中堅看護師(臨床経験5~20年)439名を対象に、【キャリアの停滞】【停滞感】を構成する因子を明らかにし、さらにキャリアの停滞が停滞感に与える影響を明らかにしてきた。 本年度は、さらに【離職意思】を含め3者の影響を明らかにするために、仮説『中堅看護師はキャリアの停滞を自覚し、停滞感を抱くことにより離職意思に影響を与える』について、共分散構造分析を実施し仮説の検証を行った。初期モデルの作成は、因子分析から得られた【キャリアの停滞】5因子17項目、【停滞感】2因子7項目、【離職意思】2項目を観測変数とし、それぞれ潜在変数に因果関係を示す矢印で示し分析し、適合度を算出した。適合度を向上させるために、モデルの修正を行い最終的に【キャリアの停滞】5因子13項目、【停滞感】2因子7項目、【離職意思】2項目を観測変数とし、再度検証を行った結果、最終的なモデルの適合度指標はGFI=0.890、AGFI=0.858、RMSEA=0.066、AIC=679.079であった。結果からは、中堅看護師のキャリアの停滞は停滞感に影響(パス係数0.80)を与え、さらに停滞感は離職意思に影響(パス係数0.54)を与えることが明らかとなった。また、【キャリアの停滞】においては5因子とも影響を与えていたが、特に仕事のやりがい(パス係数0.88)や仕事経験(パス係数0.62)が強く影響を示しており、【停滞感】に関しては2因子とも影響を与えていたが、特に見通し不全型の意欲低下(パス係数0.94)が強く影響を与えていることが明らかとなった。
|