研究実績の概要 |
【目的】輸液実施部位の中枢側は血液に輸液が混入してしまい不正確なデータとなることから採血部位として不適切である。一般的に肘窩部は採血時の第一選択部位であるが、輸液を実施する場合、前腕にルート確保されることが多く、肘窩部は前腕の中枢側となるため採血部位として選択できない。しかし、肘窩部は表在静脈が太く、安全性も高いため、輸液の影響を受けずに正確な採血データを得ることができるのであれば、第一選択としたい部位である。そこで、本研究では輸液を一時的に止めることで、輸液の影響を受けずに輸液実施部位の中枢側から正確な採血データを得ることが可能かをヒトを対象に検証した。 【方法】成人男性6名を対象にソリタT3Gを左前腕から輸液ポンプを用いて84mL/hの速度で10分間注入し輸液を止めた。その後、速やかに輸液実施部位の中枢側となる左肘窩部(介入群)および、輸液の影響を受けない右肘窩部(対照群)から同時に採血を行った。電解質や血球検査といった基本的な項目の血液分析を行い、記述統計および対応のあるt検定で比較した。 【結果】血糖値を除くすべての検査項目において介入群と対照群で有意な差は認めれなかった。また、血糖値を除く平均値の差および平均値の差の95%信頼区間でも臨床的な差は認められなかった。血糖値は介入群が対照群と比較して有意に高い結果となり、平均値の差は14.8(95%信頼区間4.8-24.9)mg/dLであった。 【考察】血糖値が対照群と比較して介入群が有意に高い結果となった理由として、ソリタT3Gに含まれるグルコースの量が関係していると考えられる。ヒトの一般的な血糖値は100mg/dLだが、ソリタT3Gのグルコースの濃度は7,500mg/dLと大幅に高い。そのため、輸液を止めたとしても、輸液実施部位の中枢側での採血結果に影響したと考えられる。
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