本研究では,医療安全教育のためのストーリー型eラーニング教材と自己学習支援システムを開発し,また,教材の学習効果と学習意欲への影響に関して評価を実施することを目的とした. 平成30年度は,事故事例の背景にある原因に着目し,「医療事故情報収集等報告書」内の事故事例から,平成28~29年度に作成した「人工呼吸器」「輸液管理」「胸腔ドレーン」「ペースメーカ」「胃ろう管理」「気管カニューレ管理」「転倒」「血糖管理薬剤の使用」「左右取り違え」に関するeラーニングの実装の他に,「清拭タオルによる熱傷」「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」「未滅菌の医療材料の使用」「オーバーテーブルを支えにした転倒」「薬剤の投与経路間違い」「与薬時の患者取り違え」「移動時のドレーン・チューブの抜去」「MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み」「三方活栓の開放忘れ」「口頭による情報の解釈の誤り」に関して,根本原因分析を実施した上でeラーニング教材を設計した.教材の構成は,①状況設定の説明,②病室への入室と観察ポイントの確認,③医療安全のために必要な実施内容の確認,④実際の事例で生じた医療事故ないしはヒヤリ・ハットの内容の確認,⑤病室への入室時のポイントの再学習とした. 実装した10コンテンツに関して,大学病院や訪問看護ステーションに医療機関に勤務する看護職を対象にアンケート調査ならびにeラーニングの学習ログ分析を行ったところ,正解に至るまでだけでなく,正解に至っても繰り返し学習していることが分かった.また,コンテンツの中でも特に②病室への入室と観察ポイントの確認に関して難易度が高いことも分かった.また,③医療安全のために必要な実施内容の確認に関しての満足度が高いことが明らかになった.よってこのeラーニングは,自己学習用教材として適していることが明らかになった.
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