本研究は、熟達した看護教員(以下教員)と未熟達者の教員が、看護基礎教育で学ぶ技術項目の中でも難易度が高い膀胱留置カテーテル技術を指導する過程で、何を観察し、学生に何をどのようにフィードバックするのかを明らかした。 対象者は、熟達者4名、未熟達者3名であった。 方法は、研究者が作成した学生が膀胱留置カテーテルを実施している動画(学生が躓きやすい無菌操作、清潔野の確保、両手の協同作業が映っている)を視聴し、視聴時の視線を視線計測装置を用いて測定した。加えて、気になった点を5つ挙げ、その理由や具体的フィードバック内容をインタビューした。 視線分析は、EMR-dStream(nac image techonology社)を用いて、技術を5場面に分割し、それぞれの注視頻度の高い領域、注視時間を対象ごとに算出した。 結果は、カテーテルセットの開封場面では、熟達者が手指消毒を注視するという特徴があった。手袋の装着場面では、全員が実施者の手元操作を注視していた。気になった点は、熟練者4名全員と未熟達者1名が清潔操作に関する内容を挙げていた。フィードバックについて、熟達者は、まず学生の行動から、失敗しがちな傾向、理解度を推測し、実施者の特徴をつかもうとし(例えば、この学生は清潔野から一歩下がって物品を扱おうとしているから、清潔との距離の取り方は意識できているなど)、それを元に、フィードバック内容を検討していた。フィードバック内容は、観察した1場面だけでなく、共通して注意すべき空間認知や清潔操作についての原則を、いろんな場面で学生が行っていた事実を元に伝え、どうすればよかったかをまず学生に問うという傾向があった。未熟達教員は、手順書に記載がある内容(クランプがしてあるか、テープの止め方、手指消毒の方法、滅菌物の確認方法)を確認し、1つ1つできているか否かを確認する傾向があった。
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