研究課題/領域番号 |
16K20741
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
市村 美香 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 講師 (80712281)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | tapping / vasodilation / venipuncture / venous palpation |
研究実績の概要 |
平成29年度は本実験で得られたデータを分析し、その結果を第37回日本看護科学学会学術集会において「末梢静脈穿刺におけるタッピング法の効果の検証-静脈穿刺困難者を対象として-」というテーマで発表した。以下に研究の概要を記す。 対象は、7段階の静脈怒張度尺度(まったく触知できない:0点~十分触知できる:6点)を用い、駆血後の怒張度得点が0点~3点(触知できるが分かりにくい)の人の肘窩部正中皮静脈とした。事前調査の結果、男性4名、女性16名の合計20名が研究対象となった。タッピングの手技は、人差し指と中指で1秒に2回の速さで10回(5秒間)軽く叩くという方法をとった。調査測定項目は、年齢、BMI、血圧、静脈要因(断面積、深さ、隆起)などとした。実験手順は、座位での安静後に、60mmHgで駆血し、駆血40秒後からタッピングする/しないを実施し、その後(駆血45秒後)、怒張度の評価と血管撮影(超音波画像診断装置 FUJIFILM SonoSite M-TURBOを使用)を行った。各被験者にタッピングする/しないの2種類の実験を同一日に行い、その順序は無作為とした。得られたデータは、符号検定(怒張度)と Wilcoxon signed-ranks test (静脈要因)を用いて分析した。 本研究の結果、対象者の平均年齢は、20.4±1.0歳、BMIは24.0±4.9、血圧は109±24.1/71.1±19.1mmHgであった。タッピング法の効果としては、タッピングしない群よりもする群において、断面積に有意な増大(p<0.01)と、深さに有意な短縮(p<0.05)が認められた。したがって、タッピングをすれば針を穿刺する深さが短縮し、神経損傷などのリスクを回避するなどの安全な静脈穿刺につながることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度は、①被験者を確保することと②本実験を開始してデータ集計を行うことを計画立案していた。 まず上記①については、本研究が対象とする駆血後の怒張度得点が0点~3点(触知できるが分かりにくい)の人を年度の初頭に男性4名、女性16名の合計20名確保することができた。その際には、被験者に研究目的・意義・方法について文書および口頭で説明し、署名をもって同意を得た。また、研究への参加・中断の自由、個人情報については秘密を厳守し、収集した情報は集団統計解析結果として看護学と医学領域の研究のみに使用することや具体的な研究内容を知りたい時は研究者に情報を求めることができることを説明するなど、倫理的配慮に留意した対応がとれた。 次に上記②については、実験手技を安定・統一させるためのトレーニングを積んでいたため、被験者確保後スムーズに本実験を行うことができた。また、本実験において苦痛を訴える被験者はおらず、実験の中断や中止をすることもなく安全に行うことができた。データ集計については、正確性を保つために慎重に行い、得られた結果は妥当なものであった。 さらに、当初の計画に加え、最終年度に予定していたデータ分析と研究成果の学会発表を行うことができた。データ分析には他大学の共同研究者の協力を得て、結果の信頼性や妥当性の担保に努めた。学会発表では、平成29年12月に開催された第37回日本看護科学学会学術集会において発表した。その際、フロアから質問や建設的な意見を得ることができ、今後研究成果をまとめ上で有益な経験となった。 以上より、本研究のスケジュールは円滑に進められていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、データ分析と研究成果の発表・報告、論文執筆を行うことを計画立案していた。しかしながら、学会発表を平成29年度に行うことができたため、最終年度には論文執筆を主に行う予定である。この計画を遂行するためには、データ分析をさらに進める必要がある。そのため、他大学の共同研究者の協力を得て研究を続ける予定である。またデータ分析の際は、統計ソフトなどを活用して効率的に行う。さらに、申請者は平成29年度に発足した日本看護技術静脈関連研究会のメンバーとなった。この研究会は、静脈関連の研究を行っている様々な研究者が集まって意見交換を行い、互いに切磋琢磨して研究を発展させることを目指す場である。この機会と人脈を糧とし、自身の研究を発展させていきたいと考えている。研究成果を広めることは日本国内に限らず、世界も視野に入れている。学会発表を国内で行ったため、論文投稿は海外の方にも知っていただけるように英語論文とする予定である。
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