平成29年度は、前年度までに得られた質的データの分析を進め、同時に、研究者が調査対象者との面談を介して実施した質問紙調査において得られた量的データの分析を実施した。これらの分析結果のトライアンギュレーションにおいては、研究協力者のスーパーバイズを得ながら、進行肺がん患者がアドバンス・ケア・プランニング(以下、ACPとする)について抱くおもいと、それが社会的背景や文化的背景によって受ける影響について多角的に分析した。さらに、がん患者が「最期までその人らしく生ききる」ことを支えるために、求められるACPのあり方や看護支援策を検討した。 本研究の対象者の8割以上は、治療の選択について自分で判断できなくなった場合に備えて代理意思決定者をあらかじめ決めておくことを重要と認識し、代理意思決定の委譲について家族や友人と話し合う自信があると回答した。しかしながら、本調査に参加する以前に代理意思決定者を決定していた者は26%のみであった。 本研究の対象者が進行肺がんを患い、予後の好ましくない状況でありながらも、ACPへのレディネスや主体的参画の程度が他の先進諸国と比較して低かったことの要因には、対象者のACPに関する知識不足を根底に、その上で辛い症状が出現するまでは「まだ大丈夫」「なるようにしかならない」と考え、現段階でのACPの必要性を認識していないこと。また、主治医がACPの話題を持ち出さない限り、医療者によるACP支援を不要であると認識していることなどが考えられた。 本研究の結果をふまえて、看護師が患者にACPに関する情報提供をする際の要点をはじめ、患者の価値観を尊重し、自分らしく生きることを支える意思決定支援策に関する日本型ACP看護支援モデルを検討した。今後、本モデルを活用した教育研修プログラムの開発および、その効果の検証が求められる。
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