本研究は救急看護師の外傷看護実践における役割モデルの構築することを目的とした。研究の前段階として日本の外傷センター3施設の視察、カナダの外傷看護師との国際座談会への参加を行った。また予備研究として救急看護師の外傷看護に関する教育背景を確認するために急性・重症患者看護専門看護師の外傷看護教育内容について調査した。 本研究の第一段階は救急看護認定看護師、急性・重症患者看護専門看護師11名への面接調査を通して外傷看護実践における経験の現状と課題を調査した。その結果、現状は【先輩から伝承された外傷看護実践】【時とともに変化する外傷看護の変遷】【看護観を変化させた患者・家族との出逢い】等が、課題は【緊急性の高い外傷患者の初期対応】、【治療段階中にある患者の状況把握と観察】、【救命困難な患者に対する終末期移行の判断】、【外傷患者の苦痛緩和や安全なADL拡大】、【外傷患者の長期的視点を持ったトランディショナルケア】、【円滑なチーム医療を実践する調整】等が見出された。第二段階は、救急看護認定看護師5名へのフォーカスグループインタビュー調査を通して外傷看護実践における役割について明らかにした。その結果、【初期診療における患者の救命と安寧を考慮した意図的介入】【患者の安全と安楽を意図した回復へのケア計画と実施】【急性期から長期的視点で見据えた患者の障害受容と社会復帰に向けた資源の活用】【診療中に並行して行う家族の対処能力の見極めと代理意思決定支援】【期を捉えた家族への受容促進の関わり】【患者・家族の意向とシームレスな診療の進行を考慮した医療者間の調整】が見出された。最終段階として専門家会議を開催し、第一、第二段階の結果から外傷看護実践における役割を発揮するための実践行動項目案として88項目を生成した。
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