本研究の目的は、救急領域における緩和ケア実践プログラムを開発し、緩和ケアシステム構築への示唆を得ることである。 平成30年度は、緩和ケア実践プログラムの開発に必要な内容を検討するために、平成28年度から平成29年度に実施した質問紙調査の分析を進めた。結果から、救急領域で終末期ケアを実践する看護師の葛藤(「自身の終末期ケア実践能力への葛藤」「医療チームとの関係性に関する葛藤」「終末期ケアを実践する環境に関する葛藤」「意思決定に関する葛藤」「家族ケアに関する葛藤」「患者の苦痛に関する葛藤」「救急医療の限界への葛藤」31項目7因子)とバーンアウトの関係について、葛藤尺度の平均値を基準に葛藤高群と葛藤低群にわけ、(日本語版)バーンアウト尺度の平均値の差を検討した。葛藤高群は、バーンアウト「脱人格化」が葛藤低群よりも有意に高く、「個人的達成感の低下」が葛藤低群よりも有意に低いことが明らかとなった(p<0.05)。バーンアウト「情緒的消耗感」では葛藤高群と葛藤低群に有意差はなかった。葛藤とセルフコンパッションの関係について、「医療チームとの関係性に関する葛藤」の葛藤高群は、セルフコンパッション肯定的側面「自分へのやさしさ」「マインドフルネス」が葛藤低群よりも有意に高く、「自身の終末期ケア実践能力への葛藤」の葛藤高群は、セルフコンパッション否定的側面「自己批判」「孤独感」「過剰同一化」しない能力が葛藤低群よりも有意に低かった(p<0.05)。葛藤は、バーンアウトや自己否定に関連するだけでなく、看護の達成感や自分へのやさしさにつながる可能性があることも示唆された。救急領域における緩和ケア実践プログラムの要素として、看護師が終末期ケア実践に伴う葛藤をセルフケアし自己成長につなげられるような終末期ケアに関する専門的な支援が必要であること示唆された。
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