回復期リハビリテーション病棟において,入院中の脳卒中患者の病棟自立度を適切に判断し安全かつ過介助にならないケアを行うことは,患者の日常生活活動の自立を促進する上で非常に重要な要因となる.本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者が効果的に病棟生活を送るために必要となる,日常生活活動の介助量を適切に判断する客観的指標を作成することである.具体的には脳卒中患者の日常生活活動の自立度と強く関連する心身機能の特定と,特定された心身機能を指標としたカットオフ値の算出を試みた.最終年度である今年度は,整容,排泄,更衣に着目した分析を実施し,以下の知見を得た. 1.整容自立度と心身機能の関連性をパス解析で分析した.結果,バランス,麻痺側および非麻痺側上肢機能,意欲が整容自立度に対して直接的な影響力を有することが示された. 2.整容が自立レベルと監視レベルに至るために必要な心身機能のカットオフ値を分析した.結果,自立レベルにはBerg Balance Scaleで41点程度のバランスが,監視レベルには簡易上肢機能検査で68点程度の上肢機能,Vitality Indexで9点程度の意欲,FIM認知領域で23点程度の機能が必要であることが明らかになった. 3.排泄動作の自立と非自立を鑑別する簡便な指標の探索を行った結果,Stroke Impairment Assessment Setの握力項目で3点がカットオフ値になることが示された. 4.更衣の自立に必要なバランス(Berg Balance Scaleで44点程度)を得るために要求される下肢,体幹機能のカットオフ値の算出を試みた.結果,Stroke Impairment Assessment Setの麻痺側下肢運動機能(股・膝)は4点,腹筋力と非麻痺側膝伸展筋力は3点がカットオフ値になることが示された.
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