本研究の目的は、外来化学療法中の再発乳がん患者の多重症状の緩和を目指す看護プログラムを開発することである。平成28年度は文献検討、平成29~30年度は、外来化学療法中に多重症状を抱えた再発乳がん患者への看護の実践知および実践上の困難を明らかにするため、外来化学療法室で勤務する看護師6名にインタビュー調査を実施した。結果、外来看護師は【自宅療養の継続に向けて優先すべきケアを整理する】実践を心掛ける一方【心身ともに脆弱化した患者の急変を予測しにくい】と感じ、【最終段階の医療・ケアという予後を見据えた意思決定支援に困難さ】を抱いていることが明らかとなった。さらに【訪問看護との連携は手探り】である実態が見い出された。令和元年度は、外来化学療法を受ける再発がん患者に対する訪問看護の実践内容や実践上の困難について、訪問看護師7名にインタビュー調査を実施した。結果、訪問看護師は【身体症状の機微を捉えてケア方法を最適化する】実践を心掛け、【療養者・家族の揺らぐ気持ちを受け止め、覚悟を支える】実践をしていた。一方で【外来との連携がとり辛い】という実態が明らかとなった。 本研究の結果より、外来化学療法中の転移・再発乳がん患者の多重症状の緩和に向けた看護は、外来看護師、訪問看護師ともに「症状緩和」と「予後を見据えた支援」を切り離さず、同時並行的に実施することを重要視していると考えられた。特に「複数の身体症状」を網羅的に把握し、症状の変化に応じた対処方法を編み出すことで、在宅療養期間の継続を支援しており、多重症状の安定化に向けたケアを緻密に展開していることが推察された。一方で「予後を見据えた支援」「外来と在宅の連携」における課題も浮き彫りとなり、最期の治療や療養の意向を確認する「終末期の話し合い」の外来での在り方の検討、外来と在宅の看護連携の促進に向けた検討が今後の課題と考えられた。
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