研究課題/領域番号 |
16K20777
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
谷口 千枝 椙山女学園大学, 看護学部, 助教 (60738251)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 禁煙 / 渇望感 / 尺度開発 |
研究実績の概要 |
本年度は、禁煙治療において我々の開発した渇望感尺度(Tobacco Craving Index: TCI)が、従来活用されていたQSU-Briefと比べて、どの程度喫煙状況を反映するかを評価するために、入力ソフトを開発し、臨床で使用を開始した。入力ソフトは愛知県内のIT関連会社とと連携し開発を行った。患者が直接タブレット入力できるようなシステムとした。現在登録数は62件である。 対象者の年齢は平均61.4(SD:14.1)、性別は男性が66%であった。禁煙経験のある者は47名(77.1%)、平均禁煙回数は3.7回であった。98%に基礎疾患があり、高ニコチン依存と診断される者は20名(32.8%)であった。初回診療時のTCIのグレードは、Grade0:0名(0%)、Grade1:14名(23%)、Grade2:22名(36%)、Grade3:25名(41%)であった。また、QSU-briefの初回総合点の平均は35.6 (SD: 15.5)であった。禁煙治療最終回(5回目)に禁煙を成功していた者は、29名(47.6%)であった。5回目の禁煙成功を従属変数に多変量調整ロジスティック回帰分析を行った。年齢、性別、禁煙経験、ニコチン依存度を調整した結果、統計学的有意にTCIのグレードが上がれば上がるほど禁煙成功しにくかった(OR:0.35, 95% CI: 0.15-0.80)。一方でQUS-briefは統計学的な差がみられなかった(OR:1.00, 95% CI: 0.96-1.04)。 これらの結果から、TCIはQSU-briefよりも患者の喫煙状況をより強く反映しているものと考えられ、その簡便さからも臨床での活用に効果が期待された。これらのことを本年度は学会発表した。 加えて、日本の禁煙治療に携わる6施設のデータから、喫煙状況にTCIが関連することを見出し、海外雑誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はTCIとQSU-Briefの比較を行い、TCIがQSU-Briefよりもより簡便で、喫煙状況を反映するというところまで評価できた。学会発表は行っているが論文は未投稿であり、進みが早いとは言えずおおむね順調に進展しているとした。一方で、喫煙状況をTCIが反映するか否かについては、日本の6施設のデータを用いて、禁煙治療最終回のTCIの高さが禁煙治療終了後12カ月の禁煙失敗を予測する要因であったことを見出し、Journal of Advanced Nursingに掲載された。このことから計画は順調に進展しているものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
TCIとQSU-Briefの関連については、海外誌に投稿するためには登録人数が少なく、今後も継続的に登録者数を増やしていく必要がある。日本の雑誌であれば投稿可能と考えられ、まずは本年度の登録者数で投稿を試みる。また海外での学会発表を試みる。今まで実施してきたコホート研究に関してはすでに海外雑誌に掲載されたため、今後はQSU-Briefとの比較にフォーカスする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はソフトの開発費用を中心に支出した。論文作成や学会発表の回数が当初予測していたことより少なく、次年度使用額が生じた。来年度は海外での学会発表や論文投稿を行うため、本年度以上の使用額が予想される。
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