研究実績の概要 |
本研究では,禁煙時に起きるタバコへの渇望感の強さを評価する尺度(Tobacco Craving Index )を新たに開発し,その尺度が禁煙や再喫煙を予測する因子になり得るかを評価した。 最終年度は日本の禁煙外来で行った,禁煙成功率とTCI(2項目),従来からある渇望感の指標QSU-Brief(10項目)との関係性について分析した(n=85)。TCIとQSU-Briefは5回の禁煙治療を通して相関していた。禁煙と初回から5回目までのTCIのArea under the curve (AUC)は,0.615~0.881であり,QSU-Briefは0.536~0.849であった。TCIはQSU-Briefと同等に対象者の喫煙状況を反映することが明らかになった。本研究成果はTobacco Induced Diseases(2019)に掲載された。 加えて,日本の禁煙治療を行う5施設で889名の禁煙外来受診者を対象に,TCIと喫煙状況との関係性を評価した。性,年齢,基礎疾患の有無,ニコチン依存度(FTND),抑うつ度(CES-D),初回の禁煙のモチベーション,初回の禁煙の自己効力感を調整した上で,TCI-Ⅲの者の禁煙成功オッズ比を算出した(reference: TCI-0,Ⅰ)。TCI-Ⅲの者の2回目から5回目までの禁煙成功オッズ比は各々0.32, 0.17, 0.07, 0.02であり,全ての診療でTCI-0, Ⅰの者と比べて統計学的有意に禁煙しにくかった。同じようにTCI-Ⅱの者も同様にTCI-0,Ⅰに比べて統計学的有意に禁煙しにくいことが明らかになった。 TCIは質問数が少ないのにもかかわらず,喫煙状況を反映し,TCIの高い者は禁煙失敗しやすいことが明らかになった。このような簡易的尺度が日本の禁煙治療で利用されることで,看護職のより個別化された禁煙支援に役立つと考えられた。
|