慢性心不全は急性増悪と寛解を繰り返すその疾患の特徴から、末期・終末期ケアへの介入は難しい。そこで本研究では、看護師に求められる、慢性心不全患者に必要な末期・終末期ケアが網羅されたケアの質評価指標を、専門・認定看護師を対象にしたデルファイ調査により開発した。さらに開発した指標を用いて、全国の循環器科で働く看護師を対象に、ケアの実態調査と指標の妥当性の検討を行った。開発した68項目の指標のケア実施状況と重要性の認識を4段階評価で回答を求め、その合計得点や指標を構成する要素の得点と対象者の属性等の回答内容について、相関係数の算出や得点の平均の比較を行い、関連を検討した。 その結果、重要性の認識について全ての項目において、高い得点を得た一方、比較的実施状況が低いと思われる項目10項目があったことから、重要だと感じているが、実施できない状況にあることが推察された。自由記述より、介入するタイミングの難しさ、時間確保の困難、医師との連携の難しさ、認識の低さなどが要因であることが伺えた。実施状況評価が高かった項目では、特に看護師が直接患者に関わる苦痛の緩和に関するケア項目が高かったことから、忙しく時間の確保が困難な状況のなか、看護師は患者の苦痛を緩和するため日々ベッドサイドでのケアに時間を割いている状況であることが考えられた。 また、介入チーム存在の有無、そのメンバーであるか否か、研修会等参加経験の有無において、有り群が無し群より指標合計得点と構成要素得点の平均値が高かったことから、ドナベディアンの医療の質評価における要素である「構造」と「過程」の機能的関係が成立すると考え、このことよりある程度妥当性が確保できたと考える。また所属機関に介入チームがあることや研修会や勉強会の参加経験が、看護師の認識を向上させ、高いケアの実施状況つながっていることが考えられ、その重要性が改めて示唆された。
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