研究課題
1.実施概要:小児がん経験者の疾患認知が就労状況・職務パフォーマンスに関連するかを明らかにすること、小児がん経験者の就労状況・職務パフォーマンスといった社会参加・活動を向上する上で、疾患認知に着目した就労支援プログラムを検討することを目的とした。平成30年度は、小児がん経験者の疾患認知として心的外傷後成長 Posttraumatic Growthに着目し、一般の大学生を対象とした心的外傷後成長に関する測定尺度の開発、および心的外傷後成長と社会参加・活動の質の関連を検証した。2.実施内容:心的外傷後成長を測定する尺度として、Posttraumatic Growth Inventory-X(PTGI-X)が適当であると考えられ、PTGI-X日本語版の妥当性・信頼性の検証を行った。平成30年6月~12月に、関東・九州・近畿地方に居住している大学生を対象とし、PTGI-Xおよび社会参加・活動に関するアンケート調査を行った。大学生252名からデータを収集し、250名のデータを最終的に分析した。解析の結果、PTGI-Xは日本人を対象とした調査においても十分な信頼性・妥当性を確保できると考えられた。また、同じデータを用いて、心的外傷後成長と社会参加・活動の関連を検討した。解析の結果、PTGI-Xのうち、精神的変容Spiritual Changeのドメインは社会参加・活動と関連していた。このため、社会参加・活動の質を向上する上で、心的外傷後成長における精神的変容Spiritual Changeに着目する重要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
日本人を対象として、心的外傷後成長を測定できるツールである Posttraumatic Growth Inventory-Expanded(PTGI-X)を開発し、その信頼性・妥当性を検証した。また、PTGI-Xを用いて、心的外傷後成長が職務パフォーマンスや就労状況などの社会参加・社会活動に影響するかを検証した。今後、心的外傷後成長を測定できるツールであるPTGI-Xや社会参加・社会活動との関連における知見の精緻化を行っていく。
平成30年6月~12月まで、一般集団を対象としたPTGI-Xおよび就労状況・職務パフォーマンスに関する調査を行い、データ入力を終了した。統計解析ソフト(SPSS、R、AMOS)を用いて、就労状況・職務パフォーマンスと心的外傷後成長の関連を検討した。今後、PTGI-Xの信頼性・妥当性および就労状況・職務パフォーマンスと心的外傷後成長の関連についての知見を精緻化するために追加調査を行い、論文執筆・英文雑誌投稿、学会発表により成果発表する予定である。
本研究では、疾患認知として小児がん経験者の心的外傷後成長に着目した。心的外傷後成長を測定するツールの開発および心的外傷後成長と社会参加・活動の関連をより精緻化する上で、日本人を対象としたデータを追加で収集する。また、心的外傷後成長を測定するツールや心的外傷後成長と社会参加・活動の関連についての知見を普及する上で、学会発表や国際誌での論文投稿を行う必要がある。
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Personality and Individual Differences
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