新生児の皮膚は胎外生活への適応や外界の様々な刺激から体を保護する役割を果たしている。近年、新生児の皮膚を覆っている「胎脂」が未熟な皮膚のバリア機能を補うため、経皮感作やアレルギー予防の面からも有用であるとされ、胎脂を残す「ドライテクニック」の導入が進んでいる。しかし、胎脂中には有害な過酸化脂質も含まれており、その含有量には出生直後より個人差がみられる。生体内で過酸化脂質の発生する過程を考慮すると、胎脂中の過酸化脂質量に母体環境が関連している可能性がある。 そこで本研究では、妊娠中の栄養摂取頻度および母体の抗酸化能(エクオール産生能)・酸化ストレス度(8-OHdG)と胎脂の過酸化脂質生成との関連、胎脂の過酸化脂質生成が皮膚バリア機能と皮膚組織に与える影響について明らかにすることを目的とした。 その結果、母親の年齢と母体の酸化ストレス度(8-OHdG)に相関関係があること、母体のエクオール産生能と胎脂中の脂肪酸代謝に関連があり、SIMCA解析によって脂肪酸組成の違いが明らかになった。また、新生児の表皮pHと母体のエクオール産生能レベルにも関連がみられた。さらに、表皮pHは新生児の皮膚状態の画像評価とも関連していたことから、母体環境が胎脂中の脂肪酸代謝ならびに新生児の皮膚状態に影響がある可能性が示唆された。
|