乳幼児期に身体抑制を受けた患児の保護者の身体抑制に際しての思いを明らかにするため、小児病棟に入院し身体抑制を受けた経験のある患児の母親5名を対象として半構成的面接を実施した。その後専門家会議を行い、逐語録の分析を行った。 結果、研究対象者5名の逐語録から、7つのカテゴリー、24のサブカテゴリー、100のコードを抽出した。抽出されたカテゴリーは<抑制されている子どもを目の当たりにするつらさ>、<必要最小限の抑制にしたいという思い>、<抑制は仕方ないという思い>、<抑制中の子どもに対するケアと医療者への信頼しきれない思い>、<医療者への信頼>、<抑制への関心をも上回る症状改善への思い>、<抑制されている子どもへの憐憫>であった。 研究協力者5 人全員が<抑制は仕方ないという思い>を述べたが、このように述べる母親も一方では<必要最小限の抑制にしたいという思い>を述べていた。看護職はこのように揺れ動き、不安定となりやすい保護者を理解し、保護者が抑制実施に同意した後もその決断を後悔することのないよう支援し続けることが必要である。 また保護者は患児への身体抑制の最小化を強く望みそのための協力を惜しまないが、医療者への気遣いや遠慮などから自身の思いや要望を伝えづらい現状が明らかになった。今後保護者と協力して身体抑制を最小化するためには保護者とのコミュニケーションの充実が重要だが、入院患児を安全に管理する主体はあくまで医療者である。保護者の協力を求めることも時には重要だが、まずは医療者が身体抑制の代替策を追求し、それでも身体抑制が避けられない場合には抑制の実施前から終了後まで患児および家族に複数回にわたって十分な説明を行うことで、保護者の不安や苦痛を軽減し信頼関係を構築することが先決であろう。 この結果は2019年8月の日本小児看護学会第29回学術集会で発表した。
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