妊娠の初期,中期,末期の3時点で協力が得られた妊婦を対象に,縦断調査を行った。調査内容は,睡眠障害を評価するピッツバーグ睡眠質問票(以下PSQI)を用いた。PSQIは,睡眠の質,入眠時間,睡眠時間,睡眠効率,睡眠困難,眠剤の使用,日中覚醒困難の7つの症状を得点化し,得点が高いほど障害されており,7つ症状の得点を合計した総合得点は,5.5点以上で睡眠障害ありとされている。調査は,妊娠初期に睡眠日誌によるセルフミニタリングを行ったセルフモニタリング群と,何も行わなかった統制群に分け行った。その結果,セルフモニタリング群は,妊娠初期・中期・末期における7つの症状およびPSQI総合得点に有意な差はみられなかった。一方,セルフモニタリングを行わなかった統制群は,PSQI総合得点において妊娠時期で有意な差を示し(p=.037),妊娠中期より末期の方が得点が高く睡眠障害が強くなる傾向がみられた(p=.065)。また,睡眠時間も,妊娠時期で差を示し(p=.001),初期の睡眠時間より末期に短くなり悪化する傾向がみられた(p=.065)。 さらに,妊娠初期のPSQI総合得点が5.5以上の睡眠障害のある妊婦を対象に,妊娠初期にセルフモニタリングをしたセルフモニタリング群,実施しない統制群に分け妊娠初期・中期・末期の睡眠障害について検討した。その結果,セルフモニタリング群は,睡眠の質,睡眠時間において妊娠時期で差を認め(睡眠の質p=.036,睡眠時間p=.048),妊娠初期に比べ,中期の睡眠の質,睡眠時間の得点が低下し改善傾向が示された。PSQI総合得点も妊娠時期で差を認め(p=.030),初期より中期の方が有意に得点が低く,改善していることが示された(p=.032)。一方,セルフモニタリングを行わなかった統制群では妊娠初期に睡眠障害を有する妊婦における妊娠時期での差は認められなかった。
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