近年、遺伝学的検査が急速に普及する中、日本人女性の遺伝学的知識の不足が報告されており、安易な受検が懸念されている。そのため、女性が遺伝学や遺伝学的検査について正しく理解し、遺伝学的検査の受検について自律的に意思決定できる能力である“遺伝リテラシー”の向上が求められている。本研究では、成人女性を対象とした遺伝リテラシー向上のための教育プログラムを開発し、有効性の検証を行った。 本研究では、3項目(遺伝学的知識の学習ゲーム、遺伝学や遺伝学的検査の講義、医療における意思決定の討議)で構成された90分間のプログラムを開発した。本プログラムを用いて、2017年5月~2019年12月にA県下の2大学に通う20歳以上の女性を対象に介入を行った。評価には、遺伝学的知識、受検に対する意思決定の葛藤、意思決定の自律性で構成された質問紙を作成し、介入前・直後・3ヶ月後に回答を求め、3時期の結果を反復測定分散分析で比較した。 参加者88名(実施回数15回)のうち、完全回答した73名(83%)を分析対象とした。対象者の年齢は21.1±1.5であった。介入の結果、遺伝学的知識(100点満点)は介入前(mean±SD: 68±22)と比較し、介入直後(90±10)、3ヶ月後(83±16)ともに有意に高かった(p<.01)。受検に対する意思決定の葛藤(0-100)は、介入前(67±18)と比較し、介入直後(42±17)、3ヶ月後(45±20)ともに有意に低かった(p<.01)。意思決定の自律性は、介入前(45±15)と比較し、介入直後(52±15)、3ヶ月後(50±16)ともに有意に高かった(p<.01)。 これらの結果から、本プログラムは遺伝学的知識を向上させ、受検に対する葛藤を軽減し、遺伝学的検査受検の意思決定の自律性の向上に有効であったことから、女性の遺伝リテラシーの向上につながることが示唆された。
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