本研究では、思春期の口唇裂・口蓋裂(以下、CLP)患者と親の視点から、手術への意思決定を行う際の支援を検討するため、下記の研究を実施した。思春期の患者を対象とした研究1では、①患者の手術への意思決定プロセス、②患者の意思決定に影響する要因を明らかにすることを目的とした。親を対象とした研究2では、③患者が手術への意思決定を行う際の親の経験、④患者が手術への意思決定を行う際の親子を取り巻く環境への親の関わり方を明らかにすることを目的とした。 研究1から、目的①患者の手術への意思決定プロセスに関して、患者は手術施行を決定する際に、第一段階として【手術施行の提示】を受け、第二段階として【手術施行への心理的葛藤】を経験し、第三段階として【手術施行の決定】に至っていることが示唆された。目的②患者の意思決定に影響する要因に関して、患者は思春期に至るまでに構築した人間関係や自身の物事の考え方に影響されながら、手術への意思決定を行っていた。 研究2から、目的③患者が手術への意思決定を行う際の親の経験に関して、親は親の視点からCLPや手術や患者に対する【親の心情】を抱える一方で、患者の視点に立って【子どもの心情】を把握し、親の心情と患者の心情をすり合わせて、親と患者が手術に臨むことができるように【親の関わり】を図っていた。目的④患者が手術への意思決定を行う際の親子を取り巻く環境への親の関わり方に関して、親は【医師との信頼関係の構築】、【夫婦間での協力体制の確立】、【親族からの支援の獲得】、【CLP患者を育てる親との交流の継続】を図り、【学校生活と治療の両立】ができるよう調整し、【公的制度の利用】をもって、患者の手術に臨んでいた。 研究1と研究2から、手術に関する情報提供の内容や方法、患者と親の手術への意向の調整など、親子で納得できる意思決定を行えるよう更なる支援の検討の必要性が示唆された。
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