研究課題/領域番号 |
16K20816
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田村 裕子 三重大学, 医学系研究科, 助教 (30746722)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 臓器移植 / 精神状態 / Quality of Life |
研究実績の概要 |
本研究を開始・継続するために現在三重大学医学部附属病院に通院中の移植後レシピエント・ドナーに対して調査を行い現状を把握した。調査結果に基づいて、今年度は腎移植後レシピエントについて解析を行った。 [目的]1.腎移植後レシピエントのQOLの現状を把握するために、維持透析患者との比較を行うこと、および、2.移植群のQOL(身体的、精神的、役割・社会的健康度)に関与する患者背景・身体的・精神的要因を明らかにすること。 [方法]平成28年3月から8月までに当院を受診した腎移植後レシピエント64例(移植群)に対して実施したPOMS・SF-36v2による質問紙法調査の結果について①Haysらが報告した透析中とのQOLの比較、②重回帰分析による移植後QOLに関する因子の検討を行った。 [研究成果]1.維持透析患者とのQOLの比較:移植群QOLは8項目全てにおいて透析群より有意に高値であることが明らかとなり、QOL向上を目標としている腎移植の目的を達成しているとともに、先行研究とも一致した結果であった。そのため、QOLの向上も透析患者が腎移植を行う際の重要な目的となり得ると考えられる。2.移植後QOLに関する因子の検討:身体的QOLに寄与したのは『調査時年齢』と『混乱』、精神的QOL に寄与したのは『活気』と『疲労感』の気分要因であった。気分要因は身体的・精神的QOLに関与しており、移植後には心理的ストレスが生じやすいことを考慮し、易疲労感・意欲等の気分要因に注目することが必要であることが示唆された。さらに、ストレス要因が精神状態を悪化させる因子ともなりうるため、心理的要因への介入は重要である。他の慢性疾患同様に、易疲労感・意欲等の気分要因がQOL向上に寄与しており、腎不全患者にとって、腎移植は身体的のみならず、心理・社会的にも根治的治療法に位置づけられる選択肢であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画として性格検査はMMPI短縮版、心理検査はPOMS2、QOL調査はSF-36v2(腎臓移植はKDQOL-SF)を実施することを予定していた。しかし、医療従事者と実施可能な検査内容等について確認・検討を行った。その結果、調査対象者の状態に合わせ性格検査はTEGⅡ・YG性格検査、心理検査はPOMSを用いることとなった。また、QOL調査について、調査対象者への負担や、今後の統計解析を考慮し、SF-36v2を用いることとした。 また、上記の調査時期についての確認・検討も行った。当初の計画として術前、術直後(調査可能な時)、術後2カ月、術後6カ月、1年、2年を予定していたが、対象者の検査や、外来受診日を考慮し、対象者への負担が少ない時期として、術前、入院中~2か月、6か月、1年、2年に調査を行うこととした。なお、性格検査については、術前、術後1年に行うこととした。 本研究は三重大学院医学系研究科・医学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施している。現在、生体臓器移植決定時レシピエント・ドナーに対して研究内容について書面にて説明し、同意書を取得後調査を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
生体臓器移植レシピエント・ドナーに対して、患者の負担を考慮した上で、適切な時期を医療従事者と相談し、調査を実施している。しかし、患者の状態によっては、回答が得られない場合もある。今後も、質問紙に対する回答が患者にとって負担にならないことを考慮しつつも、患者の状態をより反映した結果が得られるように、医療従事者と協同し、調査を継続する予定である。 また、本研究を実施するにあたり今年度、当院における臓器移植後レシピエント・ドナーの現状を把握するために質問紙調査を行った。実施した横断的調査における結果について、肝移植後レシピエント・ドナー、腎移植後レシピエント・ドナーの解析を行っていく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
データの保存・解析のためのパソコン・メディアの購入、調査を行うための使用登録料・質問紙の購入、調査を実施するための印刷用紙・インクなどを購入している。今年度実施する分について購入しており、来年度以降は予算が少なくなるため対象者の拡大も考慮し次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度への予算の繰り越し分と、来年度の予算を使用し、必要なデータの保存・解析のためのメディア等の購入、調査を行うための質問紙の購入、調査を実施するための印刷用紙・インクなどを購入する。 また、学会参加や学会発表を行うために使用予定である。
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