研究課題/領域番号 |
16K20821
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小岡 亜希子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50444758)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / 経管栄養 / 排便 |
研究実績の概要 |
本研究は、経管栄養患者の下痢を改善するために実施するものである。昨年度実施した回復期リハビリテーション病棟におけるプレインタビューでは、下痢よりもむしろ便秘に困難を感じているといった声もあり、経管栄養を受ける高齢者は、その身体機能から活動量は減り、座位を保つ排便姿勢をとることが困難なことからも、便秘に傾きやすいことは推察できる。一般の高齢者よりも経管栄養を受ける高齢者は便秘に傾きやすい一方で、下剤を内服していないのに下痢を繰り返す高齢者が多いこともこれまでの研究(課題番号26861952)から明らかであり、経管栄養を受ける高齢者の快便を目指すためには、ケアする側のアセスメント力が大きく影響するのではないかと考えた。そこで、今年度は高齢者の食事・排泄・入浴といった生活支援に対して暖かいケアを目指してニーズに沿った個別ケアを実践しているA特別養護老人ホームでフィールドワークを実施し、排便ケアの実態と排便コントロールに対する考えについてインタビューを実施した。 フィールドワークの結果から、排便の便性状はブリストルスケール4~5、排便階数は1日に1~2回、排便頻度は様々であるが、スタッフは個別の排便周期を把握しており、パット内に納まる程度の排便量であった。さらに、1日を通して布パンツにパットを敷いて生活しており、皮膚への快適性も考慮されていた。快便に向けた排便のコントロールとは、「形状のコントロール」「下剤に頼りすぎない」「快適性」「日常的な生活支援そのもの」といったキーワードが抽出され、排便ケアは覚醒と睡眠のバランスを整え、注入前には食事の意識をもてるよう口腔ケアを行い、日中は入所者の輪なのかでコミュニケーションをもつといった快便に繋がる生活支援がなされていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィールドワークの結果から経管栄養を受ける高齢者の下痢症状を改善するためのケアプログラムを開発するためには、半固形化栄養剤の使用に関することのみではなく、食事、内服、日常生活支援など包括的にケア方法を考える必要があると考え直し、国内、海外を含め、再度文献検討を進めているところである。 これまでの研究(課題番号26861952)では、経管栄養を受ける高齢者の下痢に関連している要因は、座位保持機能がないこと、液状栄養剤を使用していること。注入速度との関連がみられていた。ナーシングホームにおける便失禁の有病率と相関を調べた研究では、便失禁に影響する要因として下痢、入所年数、尿失禁、認知症、ADLの低下(摂食障害、更衣、トイレ使用、運動能)との関連を認めていた。また、老人保健施設における要介護高齢者の便の性状と関連要因を調べた研究では、低カロリー、食物繊維過多、便意無し、刺激性下剤の使用、尿失禁が下痢に関連していた。また、便秘との関連は、摂取カロリー、腸蠕動低下、1ヶ月の排便回数の減少が関連していた。
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今後の研究の推進方策 |
重度要介護高齢者の排便ケアに関する文献レビューを行い、再度整理していく予定である。 その内容をふまえて研究倫理審査委員会に申請書を作成し、承認を得た研究計画書をもとに、研究フィールド・協力者との交渉と倫理的な手続きを行い、データ収集、分析を進めてく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、分析をすすめるためのspss購入と成果発表を予定していたが、研究が遅れているため、まだ購入できていない状況である。spssについては購入し、調査を進めるための旅費、また研究成果発表のために使用する予定である。
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