研究課題/領域番号 |
16K20821
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小岡 亜希子 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (50444758)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 高齢者 / 排便ケア / 長期臥床高齢者 |
研究実績の概要 |
今後の高齢者の排便ケアの課題を明らかにすることを目的とした高齢者の排便ケアに関する文献をレビューした。 在宅では、訪問看護師が不在の間に排便を認めると、家族介護者がおむつ交換を実施することになる。そのため、家族介護者の負担を考えると、摘便を実施した後に起きる便失禁や、便失禁することによる褥瘡は避けたい問題であり、看護師の訪問時に排便を認めるよう、身体状況をアセスメントしながら摘便や下剤の使用により排便コントロール方法を模索していた。一方で、失禁するという不快な状況を考えると、高齢者自身の主観的健康感へ影響を及ぼすため、せめてパターンに応じたトイレ誘導がしやすい自然排便に移行できないかと検討されていた。 介護施設では、ほぼすべての文献で便秘と下剤の関係が示されていた。認知症高齢者にとって便秘による不快感は、日常生活への影響が大きい。そのため、便秘改善のための排便ケアとして多く下剤が用いられている。しかし、下剤は下痢や便失禁を引き起こす要因ともなり、重度要介護者が多い療養型医療施設では、便失禁による皮膚障害も問題となっていた。下剤の量や種類を調整し、便の形状をブリストル便性状スケールを用いて確認しながら、下痢や便秘を改善しようとする排便コントロールが検討されていた。 病院では、治療が終了すれば退院もしくは転院となるが、おむつに排泄していると自宅退院が困難になることが明らかにされており、障害高齢者の日常生活自立度がB2以上の場合は排泄自立への取り組みそのものが困難となることが示されていた。 在宅領域では、療養者の高い「快」と家族の最大限の介護負担軽減の双方を叶える最善のケアのために、チームで問題を解決していく協働の在り方やアセスメントスキルの充実、施設では便秘に対する排便ケアと入所者の重度化に向けたケアの在り方の検討、病院では病院機能に応じた排便ケアの研究の促進が求められる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者の便秘は、その対処方法として下剤の使用に偏り、その結果過剰な投与から便の性状が軟化し、下痢や便失禁という更なる苦痛を生んでいる。高齢者の便秘を改善するためには、「下剤を含む処方薬の検討」「運動量の増加と排便姿勢の保持のための検討」「食事摂取方法を含む食事内容の検討」は便秘を予防するための重要なケアであるが、長期臥床高齢者の場合にはこのケアが困難となる。 「食事摂取方法を含む食事内容の検討」では、食事内容が刻み食または経管栄養剤となる場合も多く、その選択肢は限られる。経管栄養剤の場合は自然滴下あるいは加圧による注入となるため、看護師、栄養士、医師が十分なアセスメントをした上での注入量の設定をしなければ、嘔吐や誤嚥を引き起こす可能性も高い。 「運動量の増加と排便姿勢の保持のための検討」においては、高齢長期臥床者は、自動運動は困難である場合が多く、腸の動きを活発にするような体幹をねじるといった運動も他動的にも困難である。そのため、運動の内容も制限があり、ケアする者が積極的にかかわる必要がある。さらに、便秘を改善するために最も効果的と考えられる便意の知覚の促しやそれに合わせた排便姿勢をとるということは困難である。そのため、便秘改善のためには下剤に頼らざるを得ないという状況にある。 「下剤を含む処方薬の検討」においても、下剤の使用方法については、形状を有形に整えるコントロールが求められているが、トイレでの排便姿勢をとることが困難な高齢者は、腹圧をかけて排便することができず、あえて形状を柔らかくコントロールしなければ臥位で排便しきれないという困難を抱えている。 以上のことから、高齢長期臥床者に不快の少ない排便ケアを目指す場合には、徒歩や車椅子で生活する高齢者と比べて、さらに高度で包括的なアセスメントと個別のケースに応じた質の高いケアが求められるということになる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の対象としている経管栄養を受ける高齢者は、多くが長期臥床高齢者であることが推察される。長期臥床高齢者の排便ケアの課題は便秘を根幹に置きながら、下痢や便失禁などの課題がさまざまである。経管栄養を受ける高齢者のみが不快な排便を強いられているのではなく、経管栄養を受ける高齢者を含む多くの長期臥床高齢者の課題と捉えるべきではないかと考えている。 今後は経管栄養を受ける高齢者を含む長期臥床高齢者を対象とした、排便ケアのプログラムの開発に着手する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
排便ケアのプログラムの効果を検証する際、便が腸内でどのような停滞状況にあるのかを確認する方法が、昨年末ころより発表されている。効果の検証の方法の一つとして、簡易エコーの購入を考え、それ用いて検証したいと考えている
|