文献検討を行った結果から、これまでの排便ケアは在宅や施設を中心に便秘の改善を目指したトイレ誘導や下剤の調整による排便コントロールが行われてきたことが明らかとなった。一方で、トイレ誘導が困難な経管栄養を受ける高齢者を含む高齢長期臥床者に対する排便ケアに対する研究は見当たらず積極的な排便コントロールがなされていないことが推察された。 高齢者は、加齢とともに腸管運動に関与する神経の変化が起こり、腸管輸送が緩徐になったり、骨盤底の機能障害や直腸感覚閾値の変化により便の排出が困難になったりすることで便秘が起こる。さらに生活環境のかかえる併存疾患による便意の伝達能力の低下や排泄行動能力の低下、水分摂取量、運動量、食事量の変化、プライバシーの減少などの生活環境の変化が便秘の要因とされている。便秘を起こすことにより、高齢の長期臥床者は多くの下剤が投与され、下痢を起こす。また、経管栄養をうける高齢者は、その栄養剤の影響によりさらに下痢を起こすことがいわれている。経管栄養を受ける高齢者を含む高齢長期臥床者はこれらの要因から排便コントロールが困難であるが、基本的な日常生活を整えることにより、便秘の改善を期待できるといえる。特に生活環境の変化による要因は、ケアにとって変化が期待できる可逆的なものであり、看護介入が求められる。
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