研究課題/領域番号 |
16K20822
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
高原 美鈴 琉球大学, 医学部, 助教 (60522191)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 家族 / 心的トラウマ / SST |
研究実績の概要 |
平成28年度は、統合失調症患者の家族を対象に、質問紙調査と半構造化面接を実施した。家族の心的外傷の測定にはIES-Rを使用し、家族が抱える心理的な困難さや負担感の測定には、家族の主観的困難度・負担調査票であるFBDSを使用し、家族の患者への対処能力の測定には、KiSS-18を使用した。半構造化面接では対象者に家族の病気の経過や心理的な負担・困難感などについて自由に語ってもらい、一人約60~90分間面接を実施した。面接内容は対象者の了解を得て、テープに録音し録音された内容を逐語録に起こし、質的帰納的分析を行っている。統合失調症患者を抱える家族に向けられる暴言は高い頻度で発生しており、暴力を受けた家族では、介護負担感や心的トラウマを抱えている。さらに、家族の心的トラウマはストレス対処能力の減弱さ、家族の患者の疾患に起因する問題解決能力の低さに影響を及ぼしていることが考えられる。 平成29年度も同様に継続し、質問紙調査と半構造化面接を実施し、さらに集団でフォーカスグループインタビュー、認知行動療法 Social Skills Training(以下SST)の介入研究を試行していく予定である。介護負担や心的トラウマ、不安・ストレスの変化や介入効果に関して系統的に抽出し、質的帰納的分析を行うとともに、SSTの効果について評価していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は統合失調症患者を抱える家族に対して、質問紙調査と半構造化面接を実施した。半構造化面接は一人約60~90分間実施している。現時点での対象人数は13名であり、質問紙調査のデータ入力および、面接内容をICレコーダーに録音された内容を逐語録に起こしており、質的帰納的分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も継続し質問紙調査と半構造化面接を実施していき、フォーカスグループインタビューによる心的トラウマを惹起した精神症状や介護上の悩み苦悩の抽出を行う。フォーカスグループインタビューはグループダイナミクスを応用した質的な情報把握の方法であり、本研究では心的トラウマの原因となった患者の急性期症状にともなう心的外傷体験を語ることによるナラティブ的アプローチおよび、集団のもつ複数の人間の精神力動的な関わりにより、対象者の介護上の悩みや苦悩について抽出を行い、系統的に整理していく。 フォーカスグループインタビュー後に、心的トラウマを惹起した当時の精神症状や家族の介護上の悩みや苦悩を抽出し、SSTによる介入研究を実施する。本介入により、患者の疾患や症状、対処行動に対する認知の矯正を図り、対象者の介護困難・負担感の軽減およびストレス脆弱性に対する耐性能力の改善を目指す。全プログラム終了後、再度フォーカスグループインタビューを行い、SSTの介入効果について、質的帰納的分析を行うとともにSSTの効果について検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象者の人数が予定より少なく、調査費用が繰り越しになったため。今年度も引き続き研究継続する費用とする。
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次年度使用額の使用計画 |
対象者が現時点で13名であり、今後も継続して対象者へ依頼し質問紙・面接調査を実施していく予定である。また、個別面接、介入研究実施に際して、物品費および人件費、謝金の経費が必要である。また、最新の知見を研究に反映させるために、研修、成果発表等国内外の研修会や国際学会に参加し、情報収集を行う予定であり、それにともなう旅費・宿泊費の経費が必要である。
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