本研究は,統合失調症患者を抱える家族を対象に,患者の急性期精神症状にともなう心的外傷体験に焦点をあて,生活技能訓練(Social Skills Training,以下SST)を活用した介入効果検証を行う.本介入により,統合失調症患者を抱える家族が,患者の疾患や症状,患者への対処行動の仕方や家族自身の自己効力感を高め,患者および家族の療養・生活環境の改善や再入院・社会的入院の防止に資することを目的とした. 最終年度は,統合失調症患者の家族への質問紙調査の分析と,SST実施前後のFocus Group Interview(以下,FGI)の質的帰納的分析を行った.分析の結果,患者の対応困難な状況に不安と苦悩を抱えながら対応してきた家族が,SSTを実施していくなかで他の家族の対応方法を共有し適切な対応を学ぶことで,患者との関わりに肯定的な感情を生じさせ,家族の苦悩や負担の軽減に影響を及ぼすなど,SSTによる介入が家族の主観的困難度や負担感に対して効果的に作用することが示された.本介入が効果的に作用した要因として,家族と支援者が協働でプログラムの構成を検討したこと,実施期間も7ヵ月間と長期間継続したことにより,参加者間の相互作用をより効果的に生じさせ,家族自身の心の負担の軽減や家族のリカバリーに影響を及ぼしたことが推察される. このことから,統合失調症患者を抱える家族へのSSTを活用した介入は,同じ経験や苦悩を抱える家族同士の交流の場である家族会に対して実施することで,患者および家族の療養・生活環境の改善や再入院・社会的入院の防止を目的とした最も効果的な介入方法の一つであることが示された. 以上の取組みで得られた知見を学術学会等で発表する予定である.
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