今年度は、急性期病院における認知症高齢者への看護に対する困難感と関連要因を明らかにするため、昨年度作成した無記名自記式質問紙を用いて調査を実施した。調査対象は、病床機能報告制度で用いられた医療機能上の「高度急性期機能」に該当する病床を有する病院を急性期病院とし、A県内の7急性期病院の看護師1731人とした。質問紙の回収数は、711人(回収率41.1%)であり、回答に欠損のあるものを除外し、620人(有効回答率35.8%)を分析対象とした。分析として、因子分析、t検定、重回帰分析を行った。 急性期病院における認知症高齢者への看護に対する困難感は「認知症の疾患理解と症状対応」「認知症高齢者の安寧確保のためのアプローチ」「医師との連携」「認知症高齢者への個別的な看護の実施」「認知症高齢者の看護アセスメント」「看護師の陰性感情のコントロール」「認知症高齢者看護に対する葛藤への対処」の7因子から構成され、急性期病院であるがゆえの困難感の構造であった。また、関連する要因として認知症高齢者のイメージ、認知症のコミュニケーションの理解、看護師経験年数、現病棟経験年数、認知症看護研修の受講経験、認知症看護の責務、定期的なカンファレンス、環境の工夫、病棟全体の認知症看護への意識の9項目が明らかとなった。 本研究により、急性期病院に特化した認知症高齢者への看護の方法や環境に対する工夫の構築をすすめていくことの重要性が示唆された。
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