本研究の目的は、研究者が取り組んできた高齢者のリロケーション(移転)を支援する看護ケアの成果をもとに『高齢者のリロケーションを促進するケアガイドライン(以下、ケアガイドライン)』を開発することである。2018年度は、急性期病院から回復期病院に転院する高齢者のリロケーションに関わる回復期病院の看護師14名を対象に半構造化面接を実施した。2019年度は、前年度に実施した面接内容の分析を進め、高齢者のリロケーションを促進する看護介入として新たに54個の看護行動が導かれ、先行研究と統合すると87の看護行動が明らかになった。さらに、看護ケアについては先行研究と統合すると19個の看護ケアが抽出された。 すべての看護行動や看護ケアの根底には、生活者としての本来の姿をいかに想像し、ケアに活かすかといった視点が特徴的であった。特に、回復期リハビリテーション病棟は、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護士、栄養士、ソーシャルワーカーなどの多職種が密に関わる機会が多く、情報共有を行いやすい環境にある。そのため、看護師は高齢者と密に関わるなかで見えてきたその人の行動パターン、性格、症状、日常生活動作などの情報を多職種と共有し、環境設定や多面的視点から観察を行い、安全策を講じていた。生活行動を制限せずに、安全策を講じることは、高齢者にとっても心理的負担が少なく、使い勝手の良い環境下で自分らしい生活行動が保てることから、新たな環境への適応を促すケアともいえる。 今回明らかになった研究成果は、今後、質問紙調査を重ね、ケアガイドラインの有用性を検証し、最終的には、臨床で活用可能なケアガイドラインの構築を目指している。
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