わが国は全世界的にみても長寿国であり、今後ますます長寿高齢社会になることが推測される。このような社会背景のなかで問題となるのは高齢者の健康や生活であり、介護を必要とせず自立した生活を送るための対策および予防が今後の中心的課題になると推測される。健康寿命の延伸や介護予防対策においては、体力、運動習慣および身体の機能的状態が大きく関与し、とりわけ歩行機能や転倒予防が重要である。本研究では青壮年・高齢者の体力、運動習慣の世代間データの検証およびその関連要因、さらには高齢者の転倒関連要因の相互関係をパス解析という包括的な統計解析手法を用いて新たな概念モデルを作成することを目的とした。一つ目の検討課題とした高齢者の転倒恐怖感とその関連要因の相互関係においては、パス解析の結果、高齢者の転倒恐怖感には運動機能だけではなく、運動有能感が直接的に関連しており、みかけの相関も0.05とごく小さいものであった。そのため、転倒恐怖感の生起を予防あるいは低減させるという観点では運動機能を高めることに加えて、運動に対する自信や統制感といった内発的動機づけにも着目すべきだと考えた。二つ目の検討課題とした大学生における運動有能感の高低と運動習慣および健康関連指標に関する調査においては、体育科目以外での運動・スポーツ経験が不足している運動部活動の経験がない者にとっては、運動有能感が得られにくいだけではなく、運動の習慣化にも影響することが示唆された。運動有能感の高低については男女間で異なる値を示したが、有意な項目が共通しているため性差を考慮するほどの差ではないと判断した。
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