精神科看護師は長期入院患者に対して、組織の方針や様々な現実的な制約によって、先の見えないかかわりを強いられ、やむを得ないと自分を納得させ、看護師は後ろめたいような申し訳ないような気持ちに苛まれながら日々のケアを実践していると報告されており、これらを踏まえ研究に至った。 本研究の目的は、第1に精神科看護師が長期入院患者に対して抱く、倫理的な悩みや葛藤、および感情のあり方を明らかにする。第2に精神科看護師が長期入院患者に対して抱く、看護実践上での倫理的悩みや葛藤、感情のあり方に対して、どのように対処しているかを明らかにする。 第1段階として、調査用紙を用いて長期入院患者の看護ケアを実践している精神科看護師に倫理的悩み尺度精神科版と看護師の感情労働尺度及び日本語版WLEISを追加して調査を行った。研究協力者の確保し、解析と分析を行った。 第2段階の研究調査は、倫理的悩み尺度精神科版に基づいて、長期入院を強いられている統合失調症患者に関する看護実践において倫理的悩みについて聴取した。また、その悩みについてどのような対処をしているかも併せて聴取した。 インタビューに協力した精神科看護師は21名(男性:13名、女性:8名)、平均年齢は44.2歳(29~57歳)、精神科経験年数は平均16年(6~30年)看護師歴は平均20年(7~37年)であった。結果は、倫理的悩みを持ちながら、長期入院の統合失調症患者と共にニーズを模索し、安全に入院生活が送ることを優先せざるを得ない状況である。精神科特例によるマンパワー不足により優先的に長期入院の統合失調症患者と関われない現実と退院後の社会資源の不足、治療方針の相違などの葛藤から退院支援がスムーズに行えない。しかし、定期的なカンファレンスや多職種間との調整を図り退院に向けたかかわりを模索しながら、日々実践できることを模索していることが明らかになった。
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