2020年度は、気分障害を理由等する休職後に就労継続している労働者を対象にした調査結果を報告した論文「気分障害による休職後に復職・就労継続している労働者のレジリエンス」を発表した。 その結果の概要は、以下のとおりである。気分障害を抱えて休職を体験した後に就労継続している労働者は、「就労継続を重視した病気との折り合い」をつけ、「就労の意味のリフレーミング」や「就労継続可能な環境の調整」によって就労することの意味や就労環境に対する認識を変化させていた。また、就労継続できていることや新たな就労への向き合い方により「就労継続での肯定的な側面の認識」が可能となり、労継続していることが明らかとなった。以上の結果から、気分障害による休職後の就労継続支援においては,症状マネジメントスキルの獲得,就労に向き合う姿勢や職場の人間関係の意味を検討すること、就労環境への肯定的な認知を促す機会を提供するという支援の方向性が示唆された。 この研究結果を基に、就労継続支援おける指針を決定した。気分障害を理由とする休職・退職後に復職した労働者を支援する際の指針として、①就労継続をするうえでの重要な課題を明確化する支援、②就労することの意味づけや優先事項を明確化する支援、③実現可能な就労継続に役立つ環境調整に向けた支援、④労働者をとりまく環境についての肯定的な側面の認識を促す支援の4つの指針を考案した。これらの指針は、いずれも就労継続の過程で行うことが重要であり、就労の意味の検討や肯定的な側面の認識を、就労継続を重視した視点で行うことにつながると考えている。それは、労働者は、復職・就労継続の前段階においては、現実的な課題よりも様々な課題に着目すると考えられるからである。以上より、支援を受ける側にとっても効果的で有意義な就労継続支援のための指針を考案したといえる。
|