本研究の目的は、認知症高齢者を自宅で介護する家族(以下、家族)を対象に、認知症介護の自己効力感を向上を目的としたプログラムを広く普及させるために、どのような方法が効果的かを検討することである。 まず、平成28年度に行ったプログラムの参加者の発言内容から、認知症高齢者との日常生活の中で家族にどのような困りごとがあり、どのように言い争うことがあるのか、それに対してどのように対応しているかなどを具体的に把握し、その内容を踏まえてこれまで作成していたプログラム内容の拡充を図った。その内容を踏まえて、平成29年度から更新した内容で集団での認知症介護自己効力感向上プログラム、個別での自己効力感向上プログラム、冊子のみの提供での3群でプログラムの実施を開始し、令和元年まで継続して実施した。 集団でのプログラムは1クール全5回を計5クール実施した。集団でのプログラムに参加した者(以下、集団PGM群)は27名、個別でのプログラムに参加した者(以下、個別PGM群)は12名、冊子のみの提供で提供前後にアンケート調査に回答した者(以下、冊子提供群)は16名であった。参加者の平均年齢は集団PGM参加者は65.1±11.1歳、個別PGM参加者は63.3±10.5歳、冊子提供は61.7±12.3歳であり、女性が8割以上を占めた。集団PGMと個別PGMに参加した者は、冊子提供群に比べて、認知症介護自己効力感と抑うつ得点が実施後に変化していた。以上より、PGMの提供は家族に認知症高齢者との新たな関係性の構築と介護者役割の獲得を認識させる可能性があること、ニーズに合わせて家族がPGM受容方法を選択できるように支援する必要性が示唆された。
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