最終年度である2022年度は、前年度に実施したインタビュー結果をもとに引き続き分析を進めた。ベトナム人技能実習生のCOVID-19流行下における生活状況が影響を及ぼす自身のメンタルヘルスに関する主観的体験について分析した結果、9のカテゴリ、27のサブカテゴリが抽出された。 背景に【言葉の壁があることで日本人との心理的隔たりが埋まらない】こと、COVID-19流行により【期待していた収入が得られず不安が募る】【人や文化との情緒的つながりや出会いが減り、心が満たされなくなる】【日本語が理解できず重要情報を見逃してしまう不安が高まる】【ウイルス感染した場合に起こりえる身体的問題とその解決方法が見通せない】ことが精神的不調の要因であった。ただし、周囲のサポートにより【不安定な状況のなかでも自分が守られている安心感が高まる】ことや【家族が自分の精神的な支えになっていることを感じる】ことで、【家族を経済的に支える責任感が高まる】とともに【COVID-19流行下での日本の生活への適応が進み、自ら困難を乗り越える気持ちが芽生え】ていた。 以上を、メンタルヘルスの経時的変化として捉え、構成すると、COVID-19流行以前より存在する「言葉の壁」という背景要因に、COVID-19の影響が加わることにより、ストレスや抑うつなどのメンタルヘルスの不調が発現し、精神的負担が深刻化していた。ただし、周囲からの適切なサポートがあれば、技能実習生は自己効力感が高まる傾向があった。 これらの分析結果については、日本看護科学学会にて口頭発表を行った。その後の論文執筆では、学会発表時の質疑応答の内容も参考にしながら考察等の再構成を重ね、原文の完成に至った。現在は、原文をもとに投稿に向けて準備を進めている。
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