2022年度は,特定妊婦の子ども虐待を予防するための多職種連携に基づく保健師の支援を検討することを目的に実施した無記名自記式質問紙調査や文献検討など,これまでの結果を踏まえて,保健師による効果的な支援のあり方を検討した. 特定妊婦に関する所属保健機関内の体制として,特定妊婦の「判断基準あり」,特定妊婦の事例について,「情報共有する」「支援方針を検討する」は割合が高い傾向であったものの,保健師個人の判断に委ねられている自治体も一部あり,特定妊婦のスクリーニングやリスクアセスメント基準の明確化や,組織としての情報共有や支援方針を検討できる体制を整備することが必要であると示唆された.特定妊婦への支援を保健師が展開するためには,特定妊婦がどのような生活を送り子育てしていくのか,自己決定できるような支援が必要であり,「妊婦自身の被虐待歴」や「DV被害者」「精神疾患がある」「予期しない妊娠」「ひとり親」「経済的に困窮」「社会的に孤立」など,多様で複雑な背景を抱える特定妊婦との信頼関係を慎重に積み重ねていく必要がある.また,自ら支援を求めない場合も多いとされる特定妊婦を妊娠後のなるべく早い時期から把握し継続的に支援するためには,多機関・多職種の支援体制が不可欠であり,多機関・多職種で支援するがゆえに共通のアセスメントシートを開発・活用すること,特定妊婦のニーズに即した制度や社会資源の開発等により,子どもへの虐待を未然に防止することが重要であると示唆された. なお,本研究では,特定妊婦の子ども虐待を予防するための多職種連携に基づく子育て支援モデルの試案を検討したが,新型コロナウイルス感染症への対応による業務逼迫が続いたことから,保健師への実際の活用にまでは至らなかったため,有効性については,今後検証する予定である.
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