自発的に支援を求めることが困難な高齢者を重大な事態が生じる前に把握し、支援につなぐための効果的な見守りの一方略を示す目的で本研究に取り組んだ。研究は4段階で構成した。 第一段階として、文献検討を行い救急搬送された高齢者の特徴について明確化した。 第二段階として、地域包括支援センターの保健師等にアンケート調査を行い、民生員や自治会などの近隣者からの相談により把握された事例と本人・家族が相談した事例の比較を行った。その結果、近隣者からの把握した事例のほうが、口腔状態が「良くない」、定期的な受診が「ない」割合が統計学的に有意に高かった。 第三段階として、第二段階の調査結果をふまえ、口腔内の衛生・機能の状態、定期的な受診の有無を含め、先行研究の結果も反映させて民生委員等の一般住民が見守りを行う際に活かすことのできるチェックリストの案を作成した。その妥当性を検証するため、地域包括支援センターの保健師等を対象に内容妥当性と一般市民の活用可能性を問うアンケート調査を企画した。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により調査を計画した地域の地域包括支援センターも業務制限等により調査協力をいただける状況に至らなかった。そのため、2年間の研究期間延長を行い実施可能性を探ることとした。 最終年度である今年度は第三段階の実施を引き続き模索したが、COVID-19の第7・8波が続く中で実施依頼をすることが困難であった。そのため、第三段階で作成したチェックリスト案の検証およびそれを用いた見守りの試行の2つの研究は実施せず終了することとした。この点については、今後の状況改善をみて改めて実施を予定している。
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