研究課題/領域番号 |
16K20866
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
井口 紗織 東京工科大学, 医療保健学部, 助教 (90758062)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 災害 / 外傷後成長 / 保健師 / 経験 / リフレクション / 意味づけ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自然災害を経験した被災市町村保健師の専門職者として成長の構造の妥当性を検証し、精緻化することにより、被災市町村保健師の専門職者としての成長を促進するための評価指標の項目原案を作成することである。 本研究期間の目標は、第1に「自然災害を経験した被災市町村保健師の専門職者としての成長の構造の妥当性の検証」、第2に「被災市町村保健師の専門職者としての成長促進方法及び評価指標の検討」、第3に「被災市町村保健師の成長促進のための評価指標の項目原案の作成」である。なお、専門職者としての成長は「保健師が、被災後の保健活動を通した経験を新たな物語として自分のものに構成していく意味づけの過程を経て、その経験に肯定的な側面を見出したり、新たな考え方ができるようになること及びそのプロセス全体」と定義した。 本年度は、上記目標のうち第1目標に取り組んだ。研究代表者は、先行研究において、東日本大震災を経験した被災市町村保健師の専門職者としての成長を「自分自身に対する捉え方」、「他者との関係に対する考え方」、「保健師の職業に対する信念や価値観」の3側面13テーマに整理し、成長を構造的に示している。本年度は、我が国において過去5年未満に噴火災害を経験した被災市町村保健師1名および土砂災害を経験した被災市町村保健師5名にナラティブ調査を行い、成長に対する影響要因を整理した。影響要因として、保健師の元来の気質、保健師経験年数に伴う災害時保健活動の内容や振り返りの機会の差異、職位や立場による責任の大小、本人や家族・自宅の被災状況、活動拠点となる役所や本庁機能の被災状況、経験を語ることができる他者の存在等が抽出された。また、先行研究との比較のもと、大規模災害と局所災害による成長の違いも考察され、災害規模や災害種別による特徴と共通性を検討することで成長の妥当性を引き続き検証していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画の第1目標達成のための調査を実施しおおむね順調に進展していると評価できる。東日本大震災以降、我が国で発生した自然災害を経験した被災市町村保健師の調査を実施したことにより、災害種別や災害規模による保健師の成長に関するデータを得ることができた。それらのデータ及び研究代表者の先行研究に基づき、翌年度の研究計画である被災市町村保健師の専門職者としての成長促進方法及び評価指標の検討を行うことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、被災市町村保健師の専門職者としての成長促進方法及び評価指標を検討する。本年度得られたデータについて、災害規模や災害種別に応じた特徴や共通性について引き続き分析を行い、成長の構造の妥当性について検証を行う。国内外の先行研究を包括的にレビューし、保健師に対する成長促進のための評価指標について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査の一部について、日程を合わせて短期間で実施することができたため、想定していた旅費より少額の執行で済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
データ分析、文献整理、追加調査の旅費、研究成果公表のための旅費等に使用する。
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