研究実績の概要 |
日本における在留外国人のうち最も多いのは順に中国、韓国・朝鮮の順であるが老年人口割合(高齢化率)は中国籍者が1.9%に対し韓国・朝鮮籍者24.1%で、在留外国人の中で最もかつ群を抜いてその割合が高い(在留外国人統計,2015)。在日外国人高齢者の健康問題を考える上で在日コリアン高齢者の研究は最も必要度が高いと言える。 そこで、過去に研究代表者が行った在日コリアン高齢者の集住する一地域における日本人、在日コリアン高齢者を比較したデータを用いて、在日コリアンでは閉じこもり傾向があること、老研式活動能力指標が低いことが生きがいと関連することを明らかにした。また、超高齢者においては、日本人と比して在日コリアンの方が社会経済的地位(SES)、QOL、手段的日常生活動作が低いことを明らかにした。加えて、在日コリアン集住地の老人保健施設を利用する在日コリアン要介護高齢者において、認知機能との関連はあったが、非識字とADLについては限定的な関連に留まり、識字能力・教育年数と認知機能、ADLは複合的な関連を示す可能性が示唆された。 超高齢者・百寿者研究は健康長寿の要因を探る重要な研究であるが、在日コリアンを対象とした縦断研究はない。そこで対象地域を拡大し、在日コリアン超高齢者・百寿者におけるソーシャル・キャピタルと健康との関係を明らかにするため、コホート研究に同意した集住地域のある地域在住の介護保険事業所利用者等を対象にデータを収集しコホートを発進させた(調査開始時平均年齢88歳)。COVID-19の影響により十分な対象者を確保したとは言い難く、研究そのものは遅延したが、得られたデータからは在日コリアン超高齢者・百寿者が生きてきた過程において差別を含む精神的負荷の存在が認められた。さらに、被差別経験者は現在の健康度が低い可能性が考えられた。
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