研究課題
本研究では、金属ナノ構造体が特定波長の光の照射下で示す表面プラズモン共鳴を利用した生体高分子の高感度検出法として、表面増強ラマン散乱測定基材の開発に取り組んだ。表面プラズモン共鳴は金属ナノ構造体の中でも鋭利な部分で強く増強され、特に狭いギャップ部位において著しく増強されることが知られているが、狭いギャップ部位に大きな生体高分子を導入することは容易ではない。これまで研究実施者はハイドロゲルの体積変化を利用することでギャップ距離を動的に制御する手法により、狭いギャップ部位に大きな物質を導入する効率を高める手法を開発してきた。しかしながら、さらなる高感度化が必要であった。そのため、固定基板上に鋭利な頂点を有する金のナノ構造体を頂点が向き合った状態でアレイ状に調製し、それをハイドロゲル表面に転写することでギャップ距離を制御する手法の開発に取り組んだ。本年度は、電子線リソグラフィを利用して金ナノ四角形プレートの構造体を作製し、ハイドロゲル表面に転写する手法に改良を加え、構造体の転写効率を高めることに成功した。これまでゲルの体積変化については塩濃度で変化するポリアクリル酸ゲルを中心に実験を進めてきたが、金ナノ構造体の表面修飾を行うことで温度応答性ゲル(ポリジエチルアクリルアミド)にも転写が可能になった。また、ギャップ距離の制御性について、電子顕微鏡による観察から評価した。ハイドロゲルは電子顕微鏡観察のための減圧下では水の揮発により変形(収縮)してしまうため、直接観察できない。そこで、膨潤溶媒をイオン液体に置換して、ギャップ距離変化を評価した。顕微分光スペクトル測定と電子顕微鏡観察を行うことで、ギャップ距離が数ナノメートル以下の精度で均一に制御可能であることが明らかになった。今後、表面増強ラマン散乱測定における高感度化への寄与の評価を進める。
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