研究実績の概要 |
葉酸はDNA合成、アミノ酸合成に必須の補酵素であり、欠乏により巨赤芽球性貧血、免疫不全症状、神経症状などを来す。妊婦で葉酸が欠乏すると、胎児の神経管形成障害リスクが上昇する。この葉酸を先天的に吸収できない遺伝性葉酸吸収不全症(Hereditary folate malabsorption,HEM)は1961年初報告され、2014年現在全世界で31の報告がある。 2014年に申請者らは、本邦となるHFM患者について報告した。その患児について、申請者らは葉酸輸送体proton-coupled folate transporter (PCFT)のコード遺 伝子SLC46A1に未報告の変異があることを発見した。当該患児は重症免疫不全症症、神経症状を有していた。過去の報告によれば、後遺症なく治療が奏効した例 は殆どない。本研究の目的は、当該遺伝子変異について機能解析を進め、遺伝性葉酸吸収不全症に対する有効な治療基準を確立することである。 我々が報告した遺伝性葉酸吸収不全症患児の遺伝子変異のうち、ひとつは重要なアミノ酸置換を生じることが過去の報告で予測されており、SNPとして登録のな い重要な変異である。一方のdeep intronic mutationについては、通常転写されるエクソンと距離のあるイントロン部位での新規変異であり、転写以降の過程に 及ぼす影響は不明である。 申請者らは平成28年度中、PCR法により、患児の葉酸吸収不全が、両親由来の遺伝子変異が組み合わせられ たことによることを確認した。また、平成29年度中、患児由来EBV-LCLを樹立し血球系へのPCFT loss-of-functionの影響の有無の検討を行った。平成30年度中新報告症例も加え更なる機能解析を行い、平成31年度は論文執筆、令和2年度は発表準備を行った。令和3年度は更なる論文執筆準備を行った。
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