研究課題/領域番号 |
16K20872
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平田 徳幸 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (40595956)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オートファジー / PI3K-Akt-mTORシグナル伝達経路 / リソソーム |
研究実績の概要 |
オートファジーは細胞分解のメカニズムで、最近哺乳動物における生物学的、各種疾病の病態生理学的な意義が注目される。申請者は、PI3K-Aktシグナル伝達系がmTORC1を介し、オートファジーを誘導することに着目し、細胞内リソソーム膜上に形成されるPhafin2とリン酸化酵素Aktの複合体の存在が必須なことを証明した。しかし、Akt活性がオートファジーをどのように誘導するかの分子機構は不明で、更なる解析が必要である。 申請者は、リソソーム膜分画に存在する新規Akt結合分子としてAkt-binding lysosomal protein(ALP;仮称)を同定した。このALPは膜貫通型領域を持つリン酸化酵素で、Scansiteによって潜在的なAktのリン酸化基質と予想される。最近、オートファジー関連疾患の一つである神経変性疾患に、このALPの遺伝子変異がてんかんや統合失調症等で役割を担う報告もなされ、中枢神経系の疾患に関与する可能性が高い。本研究ではリソソーム上に存在するAktとALPの活性に依存した、新規のオートファジー誘導分子メカニズムを解明することを目的とする。 本年度は、免疫共沈法を用いたイムノブロッティングを用いて、AktとALPの結合を解析した。その結果、結合部位についてはAkt2蛋白のC-末端とALP蛋白のN-末端に結合することが明らかとなり、この結合はAktもしくはALP活性(リン酸化)が高いと、より結合が強くなることを示した。 また、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、これらのAktとALPの細胞内局在を観察した結果、リソソーム上で共局在を示していた。 現在、AktとALPの相互作用によるリン酸化誘導と、ALPの野生型や、ALPまたはAktのリン酸化変異体、Akt-ALP結合変異体強制発現もしくはshRNAによる発現抑制による効果を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで明らかにされていなかった、Aktが関与するオートファジーにおいて、Phafin2以外に、ALPのAktへの結合領域とリン酸化依存的な結合強度、そしてAktとALPが予想通り、リソソームに共局在することを示すことができ、研究としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、AktとALPについて現在までに得られた結合及び細胞内局在に基づき、AktもしくはALPの野生型や、ALPまたはAktのリン酸化変異体、Akt-ALP結合変異体強制発現やshRNAによる発現抑制に用いて、細胞にどのような効果を及ぼすかを解析する。順調に実験が進めば、当初の予定通りにマウスの実験への移行を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね研究が順調に進んでいるが、消耗品の納入が年度内に間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度内に使い切るように計画を行う。
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