研究課題
オートファジーは細胞分解のメカニズムで、最近哺乳動物における生物学的、各種疾病の病態生理学的な意義が注目される。申請者はPI3K-Aktシグナル伝達系がmTORC1を介し、オートファジーを誘導することに着目し、細胞内リソソーム膜上に形成されるPhafin2とリン酸化酵素Aktの複合体の存在が必須なことを証明した。しかし、Akt活性がオートファジーをどのように誘導するかの分子機構は不明で、更なる解析が必要である。申請者は、リソソーム膜分画に存在する新規Akt結合分子としてVRK2を同定した。このVRK2は膜貫通型領域を持つリン酸化酵素で、リソソーム膜上でオートファジーを制御すると予想される。最近、オートファジー関連疾患の一つである神経変性疾患に、このVRK2の遺伝子変異がてんかんや統合失調症等で役割を担う報告もなされ、中枢神経系の疾患に関与する可能性が高い。本研究ではリソソーム上に存在するAktとVRK2の活性に依存した、新規のオートファジー誘導分子メカニズムを解明することを目的とする。本年度においては、shRNAを用いてVRK2を発現抑制した細胞株を、共焦点レーザー顕微鏡とイムノブロッティングを用いて解析したところ、代表的なオートファジー測定分子であるLC3 punctaの数及びLC3I/IIの比、p62の減少が抑制されていた。そして、VRK2発現抑制細胞株のLysotrackerによるリソソーム活性及びリソソーム内酵素のカテプシンDを測定することで、VRK2はリソソーム内の酵素活性を増加させることが明らかとなり、Akt結合分子として新規に同定されたVRK2は、オートファジー最終段階である蛋白分解に関与することを示した。また、VRK2はマクロファージにおける貪食活性及びインフルエンザウイルスの増殖を高めることを示した。現在この成果を雑誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
これまでに知られていないAktのオートファジーへの関与が、リソソームにAktを移行させるPhafin2以外の結合分子であるVRK2により、オートファジーの誘導を制御することが明らかとなり、研究としてはおおむね順調に進展していると考えている。
順調に計画が進められたため、当初の予定通りにマウスの実験への移行を検討する。また、これまでの研究成果を国内と国外で学会発表を行う予定である。
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