研究課題/領域番号 |
16K20873
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村田 明日香 北海道大学, 社会科学実験研究センター, 助教 (00546989)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 実験心理学 / 情動制御 / 社会的影響 / 不快情動 / 事象関連電位 / LPP |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、他者の存在が負の情動抑制に与える影響を明らかにすることである。具体的には、事象関連脳電位のLPP成分を用いて情動生成と制御プロセスを個別に検討し、他者との経験共有、他者存在の視覚的認知、そして他者との心的距離といった社会的文脈要素との関わりも検討する。平成28年度は、研究計画書に示した通り研究1を実施した。 研究1は、社会的文脈効果を出来る限り排除したミニマムな社会的状況において他者の存在が情動生成と制御に及ぼす影響を明らかにするため、実験参加者にとって見知らぬ他者が参加者との相互作用を一切持たずに隣に存在する場面を設定した。北海道大学の学部生が参加し、国際情動刺激セット(IAPS:International Affective Picture System)から選別した不快画像(怪我人や暴力場面など)および中立画像(タオルや人の真顔)を提示する画像注視課題を遂行した。実験条件は、実験参加者が単独で課題を行う単独条件と、見知らぬ他者と隣合わせに座り、2人で画像を見る他者条件を設定した。画像刺激と条件を組み合わせた4試行タイプに対して生じるLPPを検討した結果、情動生成を反映するLPP頂点振幅は中立刺激よりも不快刺激に対して有意に大きかったが、条件の差は見られなかった。一方、情動制御を反映するLPPの減衰は、単独条件と比較して他者条件で促進された。本研究の結果から、見知らぬ他者の存在が情動生成ではなく制御に影響を与えることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り実験を実施し、他者存在の効果が情動制御に影響を与えるという結果を得ることができた。また得られた知見は国際学会で発表し、現在論文としてまとめている。よってこのように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、研究2および3を実施する。研究2では、見知らぬ他者との課題の一致性および他者存在の視覚的認知に関する検討を行う。また研究3では、親しい他者との課題の一致姓および他者存在の視覚的認知について検討する。さらに、研究1で得られた成果を論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の妊娠・出産のため、予定していた海外開催の国際学会への参加ができなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は、実験実施にかかる費用(準備、実施および解析)や学会発表旅費、論文の英文校閲に充てる予定である。
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