研究課題
本研究では、中性子回折イメージングよりも高い空間分解能が期待される「中性子透過イメージングによるバルク結晶粒の結晶方位イメージング」を開発することを目的としている。今年度は、パルス中性子透過イメージング実験で得られるブラッグディップ透過率スペクトルパターンの新しい解析法である「データベースマッチング法」により、結晶粒の結晶方位イメージング法を開発し、従来法である(がサンプル表面のみが評価可能な)EBSDとの比較を行った。その結果、従来法では情報を得ることのできない積層された複数の結晶粒の結晶方位同定が個々にできていることがわかった。また、EBSDとほぼ同じ方位を同定できていることもわかった。しかしその方位差は約8°あり、パルス中性子透過イメージングの結果の信頼性を確認するため、データベースマッチング法の指数付けの結果とブラッグディップの深さの関係を調べたところ、複数の指数が重なったディップの深さがより深くなっていることがわかり、中性子透過率スペクトルの結晶方位解析はきちんと行われていることが確認できた。以上のことから、中性子透過法とEBSDでは、結晶粒バルク全体を観測しているか、結晶粒表面を観測しているかが異なっていることが明らかとなり、両者の使い分けの指針を得ることにもなった。このように初年度では中性子透過イメージングによるバルク結晶粒の2D結晶方位イメージングを予定通り開発することができた。なお、このイメージング結果は、結晶方位を認識しやすい逆極点図表示されたもので、これも予定通り実施することができた。現在、この成果は国際学術雑誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
予定通り結晶粒の結晶方位を2次元的に逆極点図イメージングできた。また、従来法であるEBSDとの比較も行い、それぞれの違いを明らかにすると共に、開発した手法の結晶方位決定精度も確認できた。また、指数付けの結果から、複数の指数が重なった場合、ブラッグディップの深さが深くなることが確認された。
次年度以降は3Dイメージング化を目指して、さらにデータ解析手法を高度化していく。サンプルは初年度に使用したものの3Dイメージング用サンプルを用意する。また、コンパクト加速器中性子源でも実験が可能であることが見込まれるため、コンパクト加速器中性子源における実験も計画している。
論文の英文校閲の完了が年度末となったため。
論文の英文校閲として使用
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日本金属学会報『まてりあ』
巻: 55 ページ: 532-536
http://doi.org/10.2320/materia.55.532