研究課題
本研究は、パルス中性子透過分光イメージング法による位置依存の中性子透過率ブラッグディップスペクトルの測定・解析により、結晶粒毎の結晶方位を可視化する手法の開発を行うものである。中性子透過イメージングには中性子回折イメージングに比べ、高い空間分解能と広い可視化範囲が期待されるため、これまでにないアプローチでバルク材料内部の結晶粒の結晶方位の可視化を試みるものである。2017年度までにブラッグディップの出現波長パターン解析により結晶方位を同定する手法を開発し、これを利用することで、材料バルク内に存在する結晶粒の数と、それぞれの結晶粒の中性子透過方向に関する結晶方位を同定・逆極点図イメージングする手法の開発に成功した。研究成果をJournal of Applied Crystallographyに掲載した。2018年度はさらに結晶粒内の詳細情報を解析・イメージングする手法の開発に取り組んだ。具体的には、ブラッグディップの出現波長パターン解析を行った後、ブラッグディップのプロファイル解析を行うことで、結晶粒内の結晶方位変化や結晶化度の程度を詳細に解析・イメージングすることを試みた。その結果、ブラッグディップ積分強度の消衰効果から結晶粒内の双晶の存在の検知や、ブラッグディップ幅からモザイク角の推定、ブラッグディップシフトからわずかな結晶方位変化の検出が可能となった。この解析方法は極めて簡便に実施できることも特長である。このように、ブラッグディップパターン解析で結晶粒毎の結晶方位を明らかにした後、さらに各結晶粒の内部の小さな結晶方位変化や双晶の存在、モザイシティ(結晶性)の変化を明らかにする手法を開発することができた。以上のように、パルス中性子透過ブラッグディップイメージング法という結晶性材料の新しい解析ツールを世界に先駆けて開発することができた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
J-PARC Annual Report 2017 Volume 2: Materials and Life Science Experimental Facility (MLF Annual Report 2017)
巻: J-PARC 18-04 ページ: 8-10
Physica B: Condensed Matter
巻: 551 ページ: 452-459
10.1016/j.physb.2017.12.058