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2019 年度 実施状況報告書

ロシア帝国内のチベット仏教徒と南・東南アジアの民族知識人に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K20880
研究機関大阪教育大学

研究代表者

井上 岳彦  大阪教育大学, 教育学部, 講師 (60723202)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワードカルムィク人 / ロシア帝国 / チベット仏教 / 東洋学者 / ナショナリズム / アジア / ブリヤート人 / 植民地主義
研究実績の概要

平成31年度は、昨年度に引き続き公刊史料や現地で収集した同時代資料の分析を進め、研究成果について複数の研究領域の学界で発表することで、多くの研究者と意見交換を行い、多角的な視点からの助言に基づき本研究の課題の仕上げを行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症のパンデミックによる調査活動中止のため次年度に一部延長することになった。
6月にイギリス・エクセターで開催された中央アジア研究ヨーロッパ学会(ESCAS)第16回大会に参加し、パネルで研究成果を発表し、ヨーロッパの中央アジア研究者と意見を交換した。7月にフランス・パリで開催された国際チベット研究学会(IATS)第15回大会でパネル発表を行い、各国のチベット研究者と意見を交換した。同7月に国際シンポジウム『清帝国におけるモビリティ再興:モンゴルの場合』(東北大学)では、ロシアの仏教徒の移動について発表した。さらに9月にモスクワで本研究課題に関する史資料を収集・分析を行った。
またロシア・ソ連における出版メディアに関する研究に分担執筆し、カルムィク人の様々な社会文化活動においてロシア語の介在が不可欠であったことを明らかにした。彼らが「弱者」だったがゆえに、世界の「同胞」との関係構築を希求していたことが彼らの世界旅行の背景として考えられる。
以上の研究活動によって、今年度はカルムィク人とブリヤート人の国際公共財を利用したグローバルな活動の重要性が明らかになり、ロシア帝国東洋学者、ロシアの仏教徒、アジアの民族知識人の通信を丹念に追うことが必要となったため、彼らの書簡を収集した。他方で、ロシア帝国と南アジア、東南アジアとの関係を再考させるような史料の発見には至らなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ロシアの仏教徒、ロシアの東洋学者、アジアの仏教徒のあいだの通信の一部を収集することができたが、分析の結果、それらは先行研究を補強する諸事実の発見に過ぎなかった。またコロナウィルス感染症の拡大によって、2月から3月に予定していたロシア帝国外交史料館での調査を行うことができず、本研究課題に遅れが生じた。
調査方法の問題点もあったと考えられる。昨年度は人的交流について人物に焦点を当てる方法をとったが、ある程度まとまりを持ちながらも各地に散逸する個人アーカイヴ史料からロシアの仏教徒の動向を有効に見出すことができなかった。組織の史料から個々人の関係性を読み解く方法がむしろ有効だったと考えられ、研究方法の再検討を行った。

今後の研究の推進方策

今年度も引き続き新型コロナウィルス感染症のため、国外調査地(ロシア)で研究することが難しい可能性が高い。ロシアでの調査・研究ができる場合、すでにロシア帝国外交文書間(AVPRI)からは調査について快諾をもらっており、障碍は少ない。とくにロシア帝国在シンガポール領事館の史料を中心に東西を行き来する人物や情報に注目することで、本研究の推進を図るつもりである。国外での調査が不可能な場合は、ロシア軍の史料や重要な二次研究文献を所蔵している北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターで調査研究を行い、本課題研究に関する人的ネットワークの解明を行う。
昨年度はロシアの東洋学者など人物とその周辺に焦点を当てる方法をとった。個人アーカイヴ史料はある程度まとまりを持ちながらも各地に散逸しており、そこからロシアの仏教徒の動向をうまく見出すことができなかった。組織の史料から個々人の関係性を読み解く方法がむしろ有効ではないかと思われ、今後の研究方法の再検討を行った。

次年度使用額が生じた理由

平成31年度2~3月に予定されていた国外調査が新型コロナウィルス感染症の感染拡大のために実施することができなかったため、課題を1年延長することになった。
調査が可能な場合はロシア調査の旅費に使用する。引き続き新型コロナウィルス感染症によってロシアでの調査が不可能の場合は、多くの史資料を所蔵する北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでの調査に使用する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 遊牧から漁撈牧畜へ―定住化政策下のカルムィクについて(18世紀後半~19世紀中葉)2019

    • 著者名/発表者名
      井上岳彦
    • 雑誌名

      地域研究

      巻: 20(1) ページ: 37-55

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 1850年代ロシア帝国における跛行的宗教行政―カルムィク人仏教徒・保護監督長・国有財産省―2019

    • 著者名/発表者名
      井上岳彦
    • 雑誌名

      歴史研究

      巻: 57 ページ: 43-66

  • [学会発表] 農耕が先か、定住化先か:ロシア帝国支配下にあるカルムィク人の対応について2019

    • 著者名/発表者名
      井上岳彦
    • 学会等名
      第7回「牧畜社会におけるエスニシティとエコロジーの相関」研究会
  • [学会発表] D.ショルコヴィツ新著『誰も異族人を救わない、その幸せは彼ら自身にある:ブリヤート人及びカルムィク人に関する歴史民族誌論文史料集』(2018)を読む2019

    • 著者名/発表者名
      井上岳彦
    • 学会等名
      日本シベリア学会第5回研究大会
  • [学会発表] Buddhists surrounded by Muslims in the Russian empire: How the Kalmyks in the Volga steppe restored the Khanate after the 1771 exodus?2019

    • 著者名/発表者名
      Takehiko Inoue
    • 学会等名
      The 16th Biennial Conference of the European Society for Central Asian Studies
    • 国際学会
  • [学会発表] The Kalmyk Buddhist Monks in the Russian Empire in the Late Nineteenth and Early Twentieth Centuries2019

    • 著者名/発表者名
      Takehiko Inoue
    • 学会等名
      The 14th Seminar of the International Association for Tibetan Studies
    • 国際学会
  • [学会発表] 旅行先としての清帝国:カルムィク人・ブリヤート人の『旅行記』から2019

    • 著者名/発表者名
      井上岳彦
    • 学会等名
      国際シンポジウム『清帝国におけるモビリティ再興:モンゴルの場合』
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Publishing in Tsarist Russia: A History of Print Media from Enlightenment to Revolution2020

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Tatsumi and Taro Tsurumi, eds.
    • 総ページ数
      264 pages(うちTakehiko Inoue分担執筆pp. 123-140)
    • 出版者
      Bloomsbury Academic
    • ISBN
      978-1350109339

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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