研究課題/領域番号 |
16K20880
|
研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
井上 岳彦 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (60723202)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | カルムィク人 / ロシア帝国 / チベット仏教 / 東洋学者 / ナショナリズム / アジア / ブリヤート / 植民地主義 |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究課題は、ロシア調査とその成果の分析を予定していた。これは、当初平成31年度に行うはずだったが、コロナ禍のために、当初計画を延長したものである。しかし、令和2年度も、コロナ禍のために実現できず、次年度へ再延長を行うことになった。さらに、ロシア調査ができなかったことに加えて、代替案の国内調査も行うことができなかった。 そのため、これまでの研究活動の中で収集済みのアーカイヴ史料、そのほかの公刊史料集、二次文献を利用し、研究課題の分析を行った。その結果、ブリヤート人ジャムツァラノーやバラディインらが、仏教に関心を持つ欧米社会やアジアの仏教社会全体に強い関心を抱いていたことが明らかとなった。これは大菩提会Maha Bodhi Societyとも関係があり、今後の研究について軌道修正を行うことができた。 そのほか、6月27日に、近代中央ユーラシア比較法制度史研究会で発表し、とくにイスラーム地域研究の研究者と意見交換を行った。ロシア帝国においては、チベット仏教もイスラームも、ロシア国外に中心的宗教拠点が存在する「外国信教」として位置づけられていた。国境を越えた信仰者の人的交流について意見交換を行うことができ、研究方法の改善において貴重な助言を得た。10月8日に、ロシア科学アカデミー・カルムィク人文研究所の招待で、オンラインで国際会議(カルムィク共和国エリスタ市)に参加した。本研究課題の論点と今後の発展について、現地研究者や欧米・アジアの研究者と意見交換し、本研究課題の独自性を見いだすことができた。12月9日に東南アジア研究者とオンライン懇談会を行い、ロシア帝国・ソ連と東南アジアのあいだでの人的交流について意見交換を行い、新たな知見を得た。バルト・ドイツ人の仏教徒カール・テニッソンの東南アジア移住の経緯を調べることは、本研究課題の解明にとっても重要となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究期間の延長を行ったが、新型コロナウイルス感染症の流行によって、令和2年度も、希望していたロシア調査ができなかった。国内出張も所属機関から許可されず、代替案として考えていた北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでの調査もできなかった。そのため、国内の史資料を利用することができず、手元にある史資料だけで分析を行った。しかし、それでは限界があり、十分な進捗を得られなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度への再延長を行ったが、コロナ禍終息の見通しははっきりしない。 研究費の繰越金は、年度末のロシア調査に充てる予定である。ロシアでは、すでに調査許可を得ているロシア帝国外交文書館(AVPRI、モスクワ)を中心に、ロシア連邦国立文書館(GARF、モスクワ)、ロシア国立歴史文書館(RGIA、サンクトペテルブルク)などの文書館史料を収集し、東洋学者の研究調査、国外でのロシア語普及事業という2つの観点から、ロシアと南・東南アジア知識人の人的交流関係を明らかにする。 研究代表者は、令和3年度から北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターに異動したため、コロナ禍でも、所蔵される史資料をある程度自由に閲覧できる状況になった。ロシア調査ができない場合は、昨年度できなかった北海道大学所蔵の史資料で、ロシアと南・東南アジアの関係について調査・分析を行い、その成果を発表する。 以上のことから、ロシア調査を行うことができない場合、繰越金のほとんどは返還するつもりである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行によって、予定していたロシア調査、代替案として考えていた国内調査のいずれも行うことができなかった。 研究費の繰越金は主に、令和3年度末のロシア調査に充てる予定である。令和3年度にロシア調査ができない場合は、研究費を返還する予定である。
|